ノックアウト細胞株
ノックアウト(KO)細胞株は、疾患のメカニズムを理解し、治療ターゲット候補の妥当性を検証するための強力なツールです。
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ノックアウト(KO)細胞株により、アッセイ構築の際の適切なコントロールの入手という課題が克服され、遺伝子型と表現型の関係を自信をもって研究できるようになりました。
しかし、CRISPR KO細胞株 の作製には時間がかかります。必要な特定のCRISPR編集を得るには平均3~4回ワークフローを繰り返す必要があります(Synthego. CRISPR Benchmark Report, 2019)。
この時間を節約するため、当社では、すぐに使用できる既製またはオーダーメイドのノックアウト細胞株をご用意しました。よく使用される細胞株を幅広く取り揃えており、ラインナップ拡大中です。CRISPRノックアウト細胞株を試薬を購入するように簡単にお求めいただけます。
当社のCRISPRノックアウト細胞株をご使用いただくことで、準備時間を短縮できます。クリックするだけで必要なCRISPRノックアウト細胞株を入手できるので、より多くのデータを取得して、より早く結果を公表できるようになります。
迅速かつ優れた費用対効果により、お客様の研究を後押しします。
遺伝子編集細胞株
遺伝子編集細胞株は、試薬やターゲットの検証など、創薬パイプラインの多くの段階で重要な役割を果たしています。 当社では、既製、オーダーメイドともに高品質のKO細胞株を幅広く取り揃えているため、お客様は時間を節約しながら研究を前に進めることができます。
遺伝子編集細胞株の利点:
- 見やすいカタログと簡単な発注プロセスにより、すぐにご希望のターゲットが見つかります。
- バックグラウンド細胞は生理学的に重要かつマイコプラズマフリーであることが証明済みです。
- 再現性のある安定した結果が得られるよう、すべてのご注文にコントロールも提供しております。
- ゲノム的に、また多くの場合、プロテオミクス的にも検証されているため、ゲノムレベルおよびプロテオミクスレベルの完全な遺伝子破壊が確認されています。 これらのデータはすべて、特定のCRISPRノックアウト細胞株ごとに提供しております。
- 当社では、複数のバックグラウンド細胞株における1000種類を超える重要なターゲットをカバーしています。バックグラウンドにはA549やMCF-7などの生理学的に重要なものが含まれます。
- ノックアウトを用いた抗体の検証は、抗体検証のゴールドスタンダードと考えられています。
- KO細胞株は、発症メカニズムの研究や、遺伝子型と表現型との関係を検討するための強力なツールであり、新規の治療ターゲットの同定に適しています。
- CRISPRの変革により、さまざまなアッセイにおける遺伝子編集細胞の使用が急速に拡大し、創薬とアッセイ構築の合理化がもたらされました。
当社における遺伝子編集細胞株の作製手順
1. 細胞株の選択
ノックアウト細胞株の樹立は、最適なターゲット遺伝子とバックグラウンド細胞株を選択することから始まります。 当社では研究コミュニティとの緊密な連携のもとで選択を行い、お客様の研究やアプリケーションのニーズに最も適した細胞株を提供することで、常にお客様をサポートできるよう努めております。
バックグラウンド細胞株は、American Type Culture Collection (ATTC) などの標準的なリポジトリから入手しており、マイコプラズマフリーであることが十分に検証・証明されています。
使用したことがない細胞株の場合、目的のタンパク質が野生株で発現していることを確認し、ターゲットをノックアウトした後も細胞が成長して生存できることを確認するなど、適合性を確認するための徹底的な評価を行います。
HEKやHeLaといった主力の細胞株でのノックアウトに加え、生理学的に重要かつ疾患に関連した細胞株でのノックアウトも行っています。 例えば、CD74はリンパ腫で高発現しているため、Rajiリンパ腫細胞株でヒトのノックアウト株CD74を作製しています。
2. CRISPRガイドのデザイン
当社のハイスループット・プラットフォームにより、CRISPRノックアウト細胞株を大規模かつ自動で作製することができます。 これにより、遺伝子編集済みモノクローナル細胞株の作製時間が短縮され、貴重な実験時間の節約・スケールアップ・長期供給保証が可能となり、長期にわたって一貫した結果が得られるようになります。
CRISPRノックアウト細胞株の作製には、適切なガイドRNAを選択することが重要です。当社は、ターゲティングの精度と効率を高めるために、配列に基づいたスコアリングや仮説駆動型の手法を含む包括的なウェブベースのgRNAデザインツールを用いて、すべてのCRISPRガイドRNAを慎重にデザインし、最適化しています。
また、デュアルRNAシステムを採用し、1つのサイトではなく、2つのガイドでターゲット配列の周囲の部位を認識しています。 これにより、小さな断片の欠失が生成され、完全なタンパク質のノックアウトが保証されます。また、通常のノックアウト効率はシングルガイドでは約95%であるのに対し、本手法では55%以上に向上し、 スクリーニング時間の短縮と高い費用対効果と信頼性の向上が見込めます。
3. トランスフェクション
RNAガイドをデザインした後は、CRISPRコンポーネントを細胞にトランスフェクトして、編集プロセスを開始する必要があります。
これまでCRISPRシステムのコンポーネントは、DNAプラスミドを用いて細胞内に導入され、編集に必要なCas酵素やガイドRNAの発現を細胞に委ねていました。 しかしこのシステムは、細胞によるCRISPRシステムのすべてのコンポーネントの効率的な転写に依存しているため、不確実性があります。 また、CRISPRシステムを継続的に発現させるため、オフターゲット効果の危険性が高まり、細胞内に外部プラスミドDNAが残るため、将来的に問題が生じる可能性があります。
当社ではその代わりに、 CRISPRリボ核タンパク質複合体を細胞内に直接送り込むことで、一過性の編集システムを構築して消滅させるため、CRISPRが継続的に発現することはなく、余分な遺伝物質が残ることもありません。 また、このシステムでは、トランスフェクションの前にガイドRNAを化学的に修飾して、特異性をさらに高めることができます。
4. 濃縮、シングルセルからの細胞増殖
編集プロセスが完了すると、クローン選択のワークフローと広範な検証プロセスを組み合わせて、相同性の高いノックアウト細胞株を作製します。
CRISPRは、大量にトランスフェクトされた細胞の「プール」で実施され、次世代シーケンシングとサンガーシーケンシングを用いて編集効率を確認します。 編集に成功した細胞を含むプールは、シングルセルクローン化され、クローン細胞集団を作るために増殖されます。
5. 検証
次にこれらのクローンをスクリーニングするために、ターゲット部位の塩基配列を調べ、目的の部位で完全な両アレルノックアウトができていることを確認します。 このゲノム検証に基づいて、次に進むノックアウトクローンを3つ選びます。
プロテオミクス検証には、 標準的な手法としてウェスタンブロッティングを使用しています。多くの場合、 特異性の高いリコンビナント・モノクローナル抗体を使用し、 精確さを保証しています。 親細胞とノックアウト細胞のタンパク質発現を比較して、完全にノックアウトされていることを確認します。
追加または代替の検証が必要な場合は、別の適切な手法を選択します。 例えば、 ターゲットを変性させることが問題となる場合、 免疫細胞染色を用いて検証することがあります。 また、ターゲットがサイトカインなどの分泌タンパク質の場合は、特異性の高いELISAによる検証を行うことが多いです。
このような例は、当社が提供するさまざまな既製のノックアウト細胞株でご覧いただけます。 例えば、ヒトCXCL10ノックアウトA549細胞株とIL1BノックアウトTHP-1細胞株はウェスタンブロッティングとELISAで検証されており、またヒトANPEP (CD13)ノックアウトTHP-1細胞株はウェスタンブロッティング、免疫細胞染色、フローサイトメトリーで検証されます。
製品の具体的な検証については、個々の細胞株データシートを参照してください。
よくある質問(FAQ)
KO細胞株は、単一クローン型で、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて作製し、 サンガーシーケンシングにより検証しています。 特定の変異情報については、製品のデータシートを参照してください。
KO細胞株のマイコプラズマ試験は実施していますか?
市販のqPCRベースの試験を使用して、細胞株バンクで実施しています。
当社でも、リリース前に、製造された細胞株の各バッチについて試験しています。
細胞を入手したら、どのように保存すればよいですか?
すぐに細胞を培養する予定がない場合、受け取り後すぐにバイアルを液体窒素に保存することをおすすめします。
わたしが所有する野生型(WT)細胞株を使用してもよいですか?あるいは購入する必要はありますか?
WT細胞株はKO細胞株のご注文時に無償で提供しており(個別購入はできません)、こちらのWTの使用をおすすめします。 KO細胞株ご注文時にどのWT細胞株を追加したらよいかは、データシートをご参照ください。 ご質問等は、当社にお問い合わせください。
KO細胞株のコントロールとして、どの野生型(WT)細胞株を購入すればいいでしょうか?
WTはKO細胞株とあわせてご注文いただく場合にかぎり無償で提供いたしますが、ご注文時に別途追加していただく必要があります。 推奨のWTについては、KO細胞株のデータシートの「一般的な注意事項」をご参照ください。 ご質問等は、テクニカル・サポートにお問い合わせください。
細胞のバイオセーフティレベル(BSL)の分類は何ですか?
当社のKO細胞株は、細胞株に応じてBSL1とBSL2に分類されます。 A549、HCT116、HEPG2、MCF7などの細胞株はBSL1です。EK-293TおよびHeLa細胞株はBSL2です。
KO細胞株にはどのような保証がありますか?
当社のKO細胞株は、Abcam product promise™保証によってカバーされています。 細胞株がマイコプラズマフリーであり、サンガーシーケンシングによってゲノムレベルで検証されていることを保証します。
細胞株の継代数は?
細胞はすべて継代数20未満です。 ロットの正確な継代数が必要な場合は、お問い合わせください。
細胞内に抗生物質はありますか?
クローンはピューロマイシン耐性によって選択されますが、細胞はピューロマイシンまたは他の抗生物質の存在下では増殖しません。
細胞の培養はどうすればいいですか?
KO細胞株のデータシートに記載の取扱い手順および当社の細胞培養プロトコールをご参照ください。
細胞が入っている標準の培地組成は何ですか?
細胞凍結培地(DMSO入り、血清フリー)です。 詳細については、KO細胞株のデータシートをご参照ください。
参考文献
1. Synthego. “CRISPR Benchmark Report: An Inside Look at What’s Happening at the Benchtop.” Synthego, Nov. 2019, www.synthego.com/crispr-benchmark.