アポトーシス
細胞死の主要な形態の1つであるアポトーシスの概要。
アポトーシスは細胞死の一形態であり、細胞収縮、細胞膜でのブレブ形成、染色体凝縮、核断片化、DNAラダーリング、そして最終的なファゴソームによる細胞貪食などを特徴とします。
セルヘルスガイド(Cell Health Guide)をこちらからこちらからダウンロードをするをする
アポトーシスとは何か、いつ起こるのか?
アポトーシスは細胞死の一形態であり、細胞収縮、細胞膜でのブレブ形成、染色体凝縮、核断片化、DNAラダーリング、そして最終的なファゴソームによる細胞貪食などを特徴とします。 アポトーシスには、細胞集団における細胞死と増殖のバランスを維持し、細胞の総数を調節する機能があります22。 また、免疫系23や一部の発生プロセスにおいても重要な役割を担っています。
アポトーシスの機能不全は、発達異常や変性疾患などでみられるような過剰な細胞死を引き起こしたり、逆に過剰な数の細胞を生存させ、発がんやウイルス感染の持続を許すような不均衡な状態をもたらすことで、疾患を引き起こす可能性があります。 これらの疾患領域についての理解を深め、効果的な治療法を開発するには、アポトーシスの役割を特定し、解明することが基本的な第一歩となります24。
分析の一環としてアポトーシス・アッセイを用いることで、細胞の健康状態の変化を早期に反映する指標の特定につながる可能性があります。 アポトーシスの測定にはさまざまな方法があります。 細胞の生存能力アッセイと同様に、最適なアポトーシス・アッセイの選択は、サンプルタイプや細胞数などの要因に左右されます。 複数の方法を組み合わせることをおすすめします。
アポトーシス・マーカー
アポトーシスは複雑なシグナル伝達カスケードを介して起こります。 図17は、アポトーシスの主なステージと、それらの現象のマーカーが検出される可能性が高いおおよその相対時間を示しています。
図17. アポトーシスのパラメータと、それらの現象のマーカーが検出される可能性が高いおおよその相対時間
これらの各ステージは順番に起こるわけではなく、その多くは重複して同時に起こります。
細胞死には、アポトーシス、ネクローシス、オートファジー、ネクロトーシスなど、いくつかの異なるパスウェイが考えられ、そのうちのいくつかは共通の特徴があり、ご自身の実験系における細胞死のメカニズムがアポトーシスであることを確認するために、複数のアポトーシス・マーカーを調べる必要があるかもしれません。
以下の表は、主なアポトーシス・マーカーと、それらを検討するために最もよく使用される方法です。
アポトーシス・マーカー | 検出方法 |
|---|---|
細胞膜の非対称性の喪失/ホスファチジルセリンの露出 | アネキシンV結合のフローサイトメトリー解析 |
アポトーシス抑制性BCL-2ファミリータンパク質の切断 | タンパク質切断のウェスタンブロッティングによる評価 |
カスパーゼ活性化 |
|
カスパーゼ基質(PARP)の切断 |
|
カスパーゼ以外のプロテアーゼ(カテプシンおよびカルパイン)の活性化 | マイクロタイタープレートでの比色/蛍光基質を用いたアッセイ |
ミトコンドリア膜電位(δ ψm)の低下 |
|
シトクロムCの放出 |
|
sub G1期細胞の増加 | sub G1ピークのフローサイトメトリー解析 |
核凝縮 |
|
DNA断片化 |
|
細胞膜でのブレブ形成 |
|
アポトーシス・アッセイ
細胞死のさまざまなタイプ、さまざまなステージで活性化されるマーカーを測定することによって、細胞が死に至る過程を調べることができます。
これらのアポトーシス・マーカーを測定するためのアッセイには、さまざまな方法があります。
細胞表面ホスファチジルセリンのアネキシンV結合
アポトーシスでみられる細胞膜の非対称性の喪失は、アネキシンVを用いて検出することができます。アネキシンVはホスファチジルセリンに結合しますが、これはアポトーシスが起こると細胞膜の外側に移動します。 解析は通常、フローサイトメトリーで行います。 アネキシンVと同時に7-AADのような膜不透過性色素を組み合わせて染色することで、intactな細胞、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞を区別することができます。
メリット:
- In vivo試験、組織・培養細胞を用いた試験に適する
- TUNEL法よりもアポトーシスを早期に検出可能25
デメリット:
- 固定細胞には適していない
アネキシンVのラベル | 測定機器 | Ex/Em |
|---|---|---|
FITC | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 495/519 |
Cy3 | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 548/561 |
Cy5 | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 647/665 |
PE | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 496/576 |
PE-Cy5 | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 565/693 |
EGFP | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 | 488/530 |
ビオチン | フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡 |
図18. アネキシンV-FITC存在下でマウス血小板をCRPによって刺激しました。 アネキシンV陽性集団を示します(AnV+ve)。26
DNAの凝縮/断片化
クロマチン凝縮とゲノムDNA断片化は、細胞膜でのブレブ形成とともに、アポトーシスの最終段階にみられる形態学的特徴と考えられています。
クロマチン凝縮:
アポトーシスに伴い、クロマチンは不均一で遺伝的にアクティブなネットワークの状態から、不活性で高度に凝縮した形態へと相転移を起こします。 DNA結合性核色素で染色すると、凝縮したクロマチンは非アポトーシス細胞のクロマチンよりも明るく染色されるため、蛍光顕微鏡(定性検出)やフローサイトメトリー(定量検出)を用いて凝縮した核を容易に識別することができます。
アッセイ | 測定機器 |
|---|---|
β-gal | 顕微鏡、プレートリーダー |
ゲノムDNAの断片化:
凝縮したクロマチンは、カスパーゼ活性化DNase(CAD)と呼ばれる特異的なヌクレアーゼによって断片化されます。 カスパーゼ・カスケードによってCADが活性化されると、ヌクレオソーム間のリンカー部位でDNAが特異的に切断され、DNAラダーと呼ばれる約200塩基対の断片が生成されます。
DNAラダーを検出する古典的な方法は、アガロースゲル上で断片化したゲノムDNAの有無を調べる方法です。 これはシンプルで半定量的な方法ですが、確実な答えが得られます。 詳細については、プロトコールをご覧ください。
DNA断片化を検出する別の方法として、TUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase dUTP nick end labeling)アッセイを用いてニック(一本鎖切断)を検出する方法があります。
TUNEL染色/TUNELアッセイ法では、デオキシヌクレオチドを切断DNAの3’-hydroxyl末端に付加する酵素である末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を利用します。 TdTは特定の免疫細胞に発現し、抗体の多様性を生み出すV(D)J遺伝子再構成のプロセスで作用します。
TUNEL染色では、TdTによって付加されたヌクレオチドを直接蛍光標識するか、化学物質(蛍光物質または酵素のいずれか)を用いて間接的に標識します。TUNEL染色は、アポトーシスに伴うDNA断片形成を解析する方法として、アガロースゲル電気泳動を用いた手法に代わる新しい方法です。
TUNEL染色/TUNELアッセイでは、光学顕微鏡を用いて解析を行うのが最も一般的です。 フローサイトメトリーによる解析には、蛍光TUNEL染色/TUNELアッセイ法も適しています。
詳細については、TUNEL染色/TUNELアッセイガイドをご覧ください。
アッセイ | 測定機器 |
|---|---|
DNA断片化 | ゲル電気泳動 |
TUNEL | フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、顕微鏡 |
メリット:
- TUNELアッセイは感度が高く、広く使用されている
- ゲル電気泳動によるDNAラダーの検出は簡便で信頼性が高い
デメリット:
- TUNELアッセイには偽陽性のリスクがある
図19. TUNELアッセイキット(ab66110)(赤色)とDAPIによる対比染色(青色)を用いたHydractinia echinataのホールマウントTUNEL染色
G1期細胞の増加
G1期で停止した細胞の割合の増加は、DNA断片化のもう1つの指標であり、フローサイトメーターで容易に検出することができます。 細胞を70%エタノール溶液などを用いて透過処理すると、DNA断片が漏出し、DNA量が低下した細胞の集団が形成されます。 ヨウ化プロピジウムなどのDNA染色色素で細胞を染色すると、細胞周期のさまざまなステージ(G1、S期、G2M期)にある細胞を反映したDNAプロファイルがフローサイトメトリーで観察されます。 アポトーシス細胞は、G1ピークの左側にみられるsubG1期細胞の集団として容易に特定されます。 このsubG1分画には、細胞の種類にかかわらず、集団内のすべての死細胞が含まれるため、このパラメータ単独ではアポトーシスの優れた指標にはなりません。
メリット:
- 単細胞懸濁液として調製可能なあらゆる種の細胞に対応
デメリット:
- 単独ではアポトーシスの優れた指標とはならない
- 固定が必要
アッセイ | 測定機器 |
|---|---|
ヨウ化プロピジウム | フローサイトメトリー |
細胞膜でのブレブ形成
アポトーシスの最終実行段階では、DNA断片化とともに、ダイナミックな細胞膜でのブレブ形成と細胞の収縮がみられます。 アポトーシスが起こると、細胞骨格が破綻し、それに伴って細胞膜の一部が外側に膨隆します。 この膨隆部は最終的に細胞から分離され、細胞質の一部を巻き込んでアポトーシス小体と呼ばれる構造体を形成します。
細胞膜でのブレブは、位相差顕微鏡を用いて生細胞内で観察することができます。 生細胞を使用できない場合、または他のパラメータを調べるために準備した細胞(例:DNA断片化の定量またはクロマチン凝縮の検出のために採取した細胞)を使用したい場合、アポトーシスに伴う細胞膜でのブレブ形成に関連するカスパーゼ基質を検出する方法もあります。 ただし、これは間接的な手法であり、偽陽性または偽陰性の結果が得られる可能性があることに留意してください。
アポトーシスに伴う細胞膜でのブレブ形成に関連するカスパーゼ基質には以下のものがあります。
- ゲルゾリン
- ROCK-1キナーゼ
- P21-activatedキナーゼ(PAK)
メリット:
- 特定の細胞集団におけるアポトーシスのリアルタイム解析が可能27
デメリット:
- カスパーゼ基質を用いた検出法には偽陽性/偽陰性のリスクがある
アッセイ | 測定機器 |
|---|---|
細胞膜でのブレブ形成 | 位相差顕微鏡 |
活性型カスパーゼの検出
カスパーゼは、進化的に保存されたシステインプロテアーゼ・ファミリーで、アポトーシスに重要な役割を果たします。
哺乳類のカスパーゼは、機能的に3つのグループ、すなわち、誘導型カスパーゼ(カスパーゼ2、8、9、10)、実行型カスパーゼ(カスパーゼ3、6、7)、炎症性カスパーゼ(カスパーゼ1、4、5、11、12)に分けられます。 誘導型カスパーゼはアポトーシスのシグナルを開始させ、実行型カスパーゼは多くのタンパク質を分解し、アポトーシスの実行へと導きます。 炎症性カスパーゼはアポトーシスには関与せず、炎症性サイトカインのシグナル伝達や、ピロトーシスなどのアポトーシスとは別の種類の細胞死に関与しています。
カスパーゼは初め不活性型のプロカスパーゼとして合成されますが、グランザイムB、デスレセプター、各種アポトソーム刺激などに反応して速やかに切断され、活性型となります。 活性化されたカスパーゼは、シグナル伝達パスウェイ下流のカスパーゼ、核タンパク質、膜タンパク質、ミトコンドリア・タンパク質など多くの基質タンパク質を分解し、最終的に細胞を死へと導きます。
活性化されたカスパーゼは、抗体を使用して、IHC、ウェスタンブロッティング、またはフローサイトメトリーにより検出することができます。 カスパーゼ酵素活性の測定には、細胞抽出液中のカスパーゼによって切断されるペプチド基質、あるいは生細胞中の活性型カスパーゼに結合する類似基質を使用します。 カスパーゼの特異性は基質によって異なります。
さまざまな実験方法による結果を組み合わせることにより、ある特定のカスパーゼが活性化されているか、あるいは不活化されているかを確認できるようになります。 特定のカスパーゼの活性化を確認するには、常に複数の方法を使用することをおすすめします。
メリット:
- カスパーゼ活性化を迅速かつ簡便に判定できる
デメリット:
- カスパーゼの活性化はアポトーシス以外の現象でも起こりうる28
- カスパーゼの切断特異性には重複がみられるため、特定のカスパーゼの検出に単一の基質/アッセイのみを使用することは推奨されない
シトクロムc 放出アッセイ
シトクロムCは、通常はミトコンドリアの内膜と外膜の間に存在しますが、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)が完全に喪失すると細胞質内に放出されます。
ミトコンドリア膜電位の破綻はcatastrophicな現象であり、 結果としてミトコンドリア膜にミトコンドリア膜透過性遷移孔が開口し、細胞質内にシトクロムCが放出され、これが引き金となってアポトーシス・カスケードの下流イベントが誘発されます。
これらの遷移孔が開口し、シトクロムCが放出されると、アポトーシス・カスケードは“point of no return”に達します。この段階から細胞が回復する可能性は極めて低く、細胞死する可能性が高いです。
シトクロムCの放出を検出する方法としては、様々な細胞内コンパートメントから抽出したタンパク質を用いたウェスタンブロッティングが最も一般的です。 この方法を用いる場合、各細胞内分画に他の分画が混入していないことがとても重要になります。 これは、特異的かつ信頼性の高い細胞内マーカーを用いて容易に確認することができます。
- 細胞質マーカー:GAPDH、アクチン
- ミトコンドリア・マーカー:VDAC1, PDH-E1
一方、シトクロムC抗体を用いた固定細胞の免疫蛍光染色を所定の時点で行うことで、ミトコンドリアから細胞質へのシトクロムCの放出を可視化することができます。
メリット:
- 生細胞または固定細胞を用いた解析が可能
デメリット:
- ウェスタンブロッティング法では正確な定量分析は困難29
アッセイ | 測定機器 |
|---|---|
シトクロムC | ウェスタンブロッティング、蛍光顕微鏡 |
図20. Apotrack™ Cytochrome C Apoptosis ICC Antibody Cocktail (ab110417):スタウロスポリンで処理したHeLa細胞を、抗シトクロムC抗体(緑色)および抗ATP合成酵素サブユニットα抗体(赤色)で染色。 白色矢印はミトコンドリアからのシトクロムCの放出を示します。
ミトコンドリア膜電位依存的色素
アポトーシスの解析では、ミトコンドリア膜電位によってミトコンドリアに蓄積する色素も用いられます。 アポトーシスが起こると、ミトコンドリアにはいくつかの変化が生じますが、中でも最も顕著な変化がミトコンドリア膜電位の喪失です30。
詳細については、前述の代謝を利用したアッセイのセクションをご覧ください。 アポトーシス細胞では膜電位の喪失により、これらの色素による染色強度が弱くなります。
グルタチオン・アッセイ
グルタチオン(GSH)は、フリーラジカルや過酸化物などの活性酸素種による細胞損傷を抑制するトリペプチドです。 サンプル中の還元型GSHと酸化型GSHの測定は、酸化やフリーラジカルによる細胞損傷に対する細胞・組織の酸化還元状態と解毒状態を評価するうえで不可欠です。 還元型グルタチオン(GSH)に対する酸化型グルタチオン(GSSG)の比はアポトーシスの調節と関連しており、GSSGの増加を伴う不均衡は細胞死を引き起こすとされています31。
グルタチオン・アッセイにより、毒性、アポトーシス、その他の状態に対する細胞応答に伴う総グルタチオン量の変化を検出することができます。
メリット:
- シンプル
- 他の試薬(細胞生存やアポトーシスの評価を目的としたマルチパラメトリック試験用の7-AADなど)と併用可能
デメリット:
- アッセイのコンポーネントは室温で長時間保管できないため、アッセイを迅速に実施することが必要
その他の細胞死
ネクローシス、アノイキス、オートファジーの評価には、他のアッセイが用いられます。 アポトーシスおよびその他の細胞死のメカニズムについては、アポトーシス、ネクロトーシス、オートファジーのそれぞれに関する3つの包括的ガイドをご覧ください。
参考文献
22. Voss, A. & Strasser, A. The essentials of developmental apoptosis. F1000Research 9, 148 (2020).
23. Ekert, P. G. & Vaux, D. L. Apoptosis and the immune system. Br. Med. Bull. 53, 591–603 (1997).
24. Fotedar, R. et al. Apoptosis and the cell cycle. Prog. Cell Cycle Res. 2, 147–163 (1996).
25. Watanabe, M. et al. The pros and cons of apoptosis assays for use in the study of cells, tissues, and organs. Microsc. Microanal. 8, 375–391 (2002).
26. Kravtsov, V., Daniel, T. & Koury, M. Comparative analysis of different methodological approaches to the in vitro study of drug-induced apoptosis. Am. J. Pathol. 155, 1327–1339 (1999).
27. Poreba, M., Groborz, K., Navarro, M. et al. Caspase selective reagents for diagnosing apoptotic mechanisms. Cell Death Differ. 26, 229–244 (2019).
28. Waterhouse, N. & Trapani, J. A new quantitative assay for cytochrome c release in apoptotic cells. Cell Death Differ. 10, 853–855 (2003).
29. Sivandzade, F., Bhalerao, A. & Cucullo, L. Analysis of the mitochondrial membrane potential using the cationic JC-1 dye as a sensitive fluorescent probe. Bio-Protocol 9, e3128 (2019).
30. Circu, M. & Aw, T. Glutathione and modulation of cell apoptosis. Biochim. Biophys. Acta Mol. Cell Res. 1823, 1767–1777 (2012).