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免疫寛容と自己免疫

免疫寛容が破綻し、免疫系が自己抗原と非自己抗原を識別できなくなると、自己の正常な細胞や組織を攻撃する自己免疫(Autoimmunity)が起こり、膠原病などの自己免疫疾患を誘発します。


免疫寛容

自己反応性の B 細胞および T 細胞から自己を守る免疫寛容(Self-tolerance)には、中枢性寛容(Central tolerance)と末梢性寛容(Peripheral tolerance)があります。中枢性寛容では、B 細胞は骨髄、T 細胞は胸腺で、それぞれ分化の過程でネガティブ・セレクションを受け、自己反応性を示す未熟な細胞のクローンはプログラム細胞死により死滅します(クローン消失)。一方末梢性寛容では、アネルギー(Anergy; 不応答)、イグノランス(Ignorance; 抗原の隔絶/無視)、プログラム細胞死(アポトーシスなど)、制御性 T 細胞(Treg)による抑制などの機構により、中枢性寛容で処理されずに成熟した自己反応性細胞は排除または不活性化されます。

Treg はT 細胞の一種で、ターゲット細胞との直接の接触、または TGF-β や IL-10 などの免疫抑制因子の放出により、免疫寛容の効果を発揮します。最近の研究で、Treg はエフェクター T 細胞と共局在し、ネガティブ・フィードバック機構により自己免疫を抑制して免疫システムの恒常性を維持していることが示されています2

FoxP3 抗体 / タンパク質・ペプチド

TGF β 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

IL-10 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

IL-10 SimpleStep ELISA キット

制御性 T 細胞研究用抗体

自己免疫反応

免疫寛容の機構が破綻すると、自己・非自己の区別なく免疫応答をする、自己免疫反応が起こります。この免疫反応が続くと、慢性的に炎症が起こります。こうした自己免疫反応のメカニズムは以下の通りです。

  • 自己反応性のヘルパー T1 細胞(Th1)がインターフェロン γ(IFN γ)と IL-17 を放出し、TNF や IL-1 などのサイトカインを放出するマクロファージを活性化し、局所的な炎症を引き起こす。
  • 自己反応性の細胞傷害性 T 細胞(Tc)が広範囲の組織にダメージを与える。
  • 不適切な T 細胞応答により自己反応性の B 細胞クローンが増殖し、自己傷害性の自己抗体(Autoantibody)を産生する。
  • 自己抗体が補体系を活性化して炎症を引き起こし、細胞表面上のホルモン受容体や神経伝達因子受容体を介したシグナル伝達を阻害し、また血中の抗原と結合して無用な複合体を形成する3

免疫システムは理論上どのような物質に対しても応答する能力があるので、自己由来の物質に反応する T 細胞や B 細胞が産生されることによる自己免疫反応が起こるのは、ある意味当然のことです。このような自己免疫反応に対する防御のシステムとして、クローン消失に代表される免疫寛容は極めて重要です。

IFN γ 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

IFN γ SimpleStep ELISA キット

IL-17 抗体 / ELISA キット /  タンパク質・ペプチド

IL-17 SimpleStep ELISA キット

T 細胞の恒常性維持

免疫寛容において重要なのは、T 細胞の恒常性を維持することです。そのための非常に重要なプロセスの一つは、前にも述べた、中枢性寛容における自己反応性 T 細胞の除去(クローン消失)です4。その主要なメカニズムはアポトーシスによる細胞死ですが、プログラムされたネクローシスとも言える細胞死、ネクロトーシス(Necroptosis)も関与していると考えられています。TNF により誘導され、RIP3(Receptor interacting protein kinase 3)や RIP3 の基質である MLKL(Mixed Lineage kinase domain-like)により媒介されるネクロトーシスは、炎症や疾病の発症に大きく関わっていると考えられています5

ネクロトーシスのキープレーヤー MLKL

MLKL および RIP3 抗体・タンパク質・生理活性物質

MLKL ~ 注目のRabMAb®

TNF 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

免疫寛容の破綻

自己免疫性疾患の引き金となる免疫寛容の破綻は、次のようなことが原因で起きると考えられています。

  • 組織へのウイルス感染がウイルスに非特異的な T 細胞の増殖をも誘導し、その結果アネルギーがその処理能力を超える6
  • 感染などが原因で起こった免疫反応に対する抗原のエピトープに相同性が高い自己抗原がたまたま存在し、その自己抗原に対しても免疫応答を誘発する(分子擬態)7。この場合、感染の初期に適切な治療を行うことで自己免疫疾患の発症を低減できる可能性がある8
  • 腫瘍細胞に対する免疫細胞がそのままの状態で、あるいは活性化して、正常細胞をも攻撃するようになる。これについては免疫エディティング(Immunoediting)という類似の説がある。この説では、体細胞変異により免疫原性が低くなり、増殖と免疫応答の平衡相(増えも減りもしない状態)となった腫瘍細胞が分泌する抗原が、正常細胞のタンパク質との交差反応を誘発する9
  • 細胞ストレスや細胞傷害により放出された Heat shock protein(HSP)などのダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)が免疫系を活性化し、それに伴い自己免疫反応が誘発される。また細胞死を起こした細胞から放出された核酸が B 細胞上の Toll-like receptor(TLR)を刺激し、自己抗体の産生が誘導される6

TLR 抗体 / タンパク質・ペプチド

HSP 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

Genetic susceptibility 遺伝との関連性

自己免疫疾患の発症は、主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子などの遺伝的背景とも関係があります。例えばヒト白血球抗原 HLA クラス I およびクラス II のアレルが特定の自己免疫疾患と強い関連性を持つことが示されています6,10,11。また、T 細胞応答の抑制性受容体である CTLA4 や、T 細胞受容体(TCR)シグナル伝達に負の調節因子として働く PTPN22 の遺伝子変異が、自己免疫疾患の発症リスクになるとの報告があります。いずれにせよ免疫寛容が破綻して自己免疫疾患が発症するメカニズムは未だ十分に解明されているとは言えません。今後の研究の進展が期待されます。

HLA クラス I 抗体

HLA クラス II 抗体 / タンパク質・ペプチド

CTLA4 抗体 / ELISA キット / タンパク質・ペプチド

PTPN22 抗体 / タンパク質・ペプチド

免疫学関連情報

References

1.    Josefowicz, S. Z., Lu, L.-F. & Rudensky, A. Y. Regulatory T Cells: Mechanisms of Differentiation and Function. Annu. Rev. Immunol. 30, 531–564 (2012).

2.    Liu, Z. et al. Immune homeostasis enforced by co-localized effector and regulatory T cells. Nature 528, 225–230 (2015).

3.    Fairweather, D. Autoimmune Disease: Mechanisms. Encycl. Life Sci. 1–6 (2007). doi:10.1002/9780470015902.a0020193

4.    Kaczmarek, A., Vandenabeele, P. & Krysko, D. V. Necroptosis: The Release of Damage-Associated Molecular Patterns and Its Physiological Relevance. Immunity 38, 209–223 (2013).

5.    Pasparakis, M. & Vandenabeele, P. Necroptosis and its role in inflammation. Nature 517, 311–320 (2015).

6.    Perumbeti, A. Pathobiology of Human Disease. Pathobiology of Human Disease (2014). doi:10.1016/B978-0-12-386456-7.07906-5

7.    Cusick, M. F., Libbey, J. E. & Fujinami, R. S. Molecular mimicry as a mechanism of autoimmune disease. Clin. Rev. Allergy Immunol. 42, 102–111 (2012).

8.    van Kempen, T. S., Wenink, M. H., Leijten, E. F. a., Radstake, T. R. D. J. & Boes, M. Perception of self: distinguishing autoimmunity from autoinflammation. Nat. Rev. Rheumatol. 1–10 (2015). doi:10.1038/nrrheum.2015.60

9.    Joseph, C. G. et al. Association of the autoimmune disease scleroderma with an immunologic response to cancer. Science 343, 152–7 (2014).

10.  Gough, S. C. L. & Simmonds, M. J. The HLA Region and Autoimmune Disease: Associations and Mechanisms of Action. Curr. Genomics 8, 453–65 (2007).

11.  Smilek, D. E. & St Clair, E. W. Solving the puzzle of autoimmunity: critical questions. F1000Prime Rep. 7, 17 (2015).

登録