Staining in paraffin-embedded mouse cerebellum tissues by immunohistochemistry

免疫組織染色トラブルシューティング

免疫組織染色における問題と、その解決法をまとめました。


1. 染まらない

2. バックグラウンドが高い

3. 非特異的反応がある

4. コントロールを設定していない



1. 染まらない

一次抗体と二次抗体の組み合わせが違っている: 二次抗体のターゲットが一次抗体のホスト動物種であることを再確認してください (例:一次抗体がウサギ由来なら、用いる二次抗体は抗ウサギ。)

一次抗体の反応性(親和性)が弱い: 抗体の希釈倍率を下げる(濃度を高くする)か、またはインキュベート時間を長くしてみてください (4°C一晩など)。

抗体が IHC サンプル上の抗原構造を認識できない: パラフィン切片から IHC サンプルを調製する際の変性などでターゲット・タンパク質の構造が変化し、抗体がその構造を認識できなくなっている場合があります。現在お使いの抗体がネイティブな構造のみを認識する抗体ではないか確認してください。またお使いの抗体を Application に IHC-P と記載がある製品に変えてください。

一次抗体や IHC 増幅キットの活性が失活している: 不適切な保管などの理由で、一次抗体、二次抗体、キット類の活性が低下しているかもしれません。確実に反応が認められるポジティブ・コントロールでも試して下さい。

サンプル中にターゲット・タンパク質が存在しない: ポジティブ・コントロールでも実験を試して下さい。アブカムが推奨するポジティブ・コントロールはデータシートに記載されています。記載されていない場合はテクニカル・サポートにお問い合わせください。

サンプル中に存在するターゲット・タンパク質が少ない: 各種増幅キット、増幅法などを試して下さい。

二次抗体の保存条件が悪かった: 蛍光標識二次抗体は光によって、酵素標識二次抗体は熱や繰り返しの凍結融解によって活性が低下する場合があります。保存条件などを確認してください。また新しい二次抗体を使用してください。

脱パラフィンが十分でない: キシレンによるインキュベーション時間を長くするなどして、脱パラフィンを十分に行ってください。

ホルマリンやパラホルムアルデヒドを用いた固定の際に抗体を認識するエピトープが修飾された: お使いの抗体を Application に IHC-P と記載がある製品に変えてください。またエピトープを再露出させる抗原賦活化を行ったり、また固定時間を短くしたりしてください。

タンパク質が核内に存在し、核タンパク質に抗体が結合できない: ブロッキング・バッファーや希釈バッファーと共に界面活性剤などの透過剤を用いてください。

バッファーがバクテリアによってコンタミネーションしている: 常に新しい滅菌済みの PBS を使用するか、または 0.01% のアジ化ナトリウムなどの防腐剤を含むバッファーを使用してください。


2. バックグラウンドが高い

非特異的な反応を抑えるためのブロッキングを行っていない、または不十分である: ブロッキング剤のインキュベーション時間を延ばすか、またはブロッキング溶液の成分を見直してください。アブカムが推奨するブロッキングは、組織では 10 % 正常血清で1時間、培養細胞では 1~5 % BSA で 30 分です。

一次抗体の濃度が高い: 希釈倍率を下げた上でインキュベート時間を長くするなど、一次抗体の反応条件を再検討して下さい。

インキュベーション温度が高い: 4 ℃ でのインキュベートが適している抗体も多数あります。

二次抗体が非特異的に結合している: 一次抗体を抜いて二次抗体を反応させてみてください。それでも反応が認められたら、二次抗体が直接サンプルと反応しています。

組織の洗浄が不十分で固定剤が残っている: すべての洗浄過程を確実に行ってください。

内因性物質が反応する: サンプル中の酵素などの内在性物質が、直接発色反応に関与する場合があります。内在性アルカリ・フォスファターゼは 2mM レバミゾール、内在性ペルオキシダーゼは 0.3% v/v 過酸化水素で処理し、失活させます。

増幅されすぎた: 増幅システムのインキュベーション時間を短くしたり、溶液を希釈したりして反応条件を再検討してください。

基質発色反応が強すぎる: 反応時間を短くしてください。

発色剤が PBS と反応する: Tris など別のバッファー系を使用して下さい。

透過処理が膜に過剰に作用した: 透過剤を使用しないでください。


3. 非特異的反応がある

一次抗体または二次抗体の濃度が高い: 抗体濃度を下げる、インキュベーション時間を短くするなど、反応条件を再検討してください。その際はネガティブ・コントロールでも試し、シグナルの強度を比較するとより効果的です。

内因性物質が反応する: サンプル中の酵素などの内在性物質が、直接発色反応に関与する場合があります。内在性アルカリ・フォスファターゼは 2 mM レバミゾール、内在性ペルオキシダーゼは 0.3% v/v 過酸化水素で処理し、失活させます。

サンプルと同じ動物種由来の一次抗体を用いた(例:マウスの組織をマウス一次抗体で染色した): 二次抗体はサンプル内在性のイムノイムノグロブリンとも反応します。動物種が異なる別の一次抗体に変えてください。このような条件下で使用する特別なキットもあります。

組織または細胞が乾燥している: 操作の途中でサンプルを乾燥させないでください。


4. コントロールを設定していない

ポジティブ・コントロールを設定していない: 実験においては必ずポジティブ・コントロールを設定してください。未知のサンプルで染色が認められなかった場合、そのサンプルにターゲットが存在していないからなのか、それとも抗体などの試薬や手技に原因があるのか、判定することは困難だからです。そのポジティブ・コントロールには、ターゲットが発現していることが確実な細胞や組織を用います(次の項を参照)。ポジティブ・コントロールについてサンプルと同じ試薬と手技で実験を行い、ポジティブ・コントロールでは染色が認められた場合、サンプルにはターゲットが存在していないと考えられます(「陰性」の確認)。ポジティブ・コントロールで同様の操作を行い、それでも染色が認められなかった場合は、試薬や手技に不備があった可能性があります。

ポジティブ・コントロールとして適切な細胞や組織がわからない: まずは抗体のデータシートをご確認ください。ポジティブ・コントロールについての情報が記載されている場合は、それに従ってください。記載されていない場合には、下記をご参照ください。

  • 使用する抗体のデータシートに Abreview(実際に使用した研究者さんが投稿したレビュー)が記載されているかどうかをご確認ください。反応が認められているレビューに使用されているサンプルは、ポジティブ・コントロールとして使える可能性が高いと思われます。ただし当然のことながら、サンプルの調製法や実験条件は研究者さんによって異なりますので、内容をよくご確認ください。
  • 使用する抗体のデータシートにリンクが記載されている Swiss-Prot や Omnigene などのデータベースを利用し、ターゲット・タンパク質の発現している細胞を調べてください。
  • さまざまな細胞における各種タンパク質の発現レベルがまとめられた、GeneCards のデータベースをご参照ください。
  • Human Protein Atlas のデータベースには、さまざまな正常組織、腫瘍組織、細胞株での免疫染色の実績が掲載されていますので、参考にしてください。
  • PubMed で関連文献を検索し、確認してください。


ネガティブ・コントロールを設定していない: 染色像が得られた場合でも、その反応が抗体特異的なものではない可能性もあります。その可能性を否定するためには、ネガティブ・コントロールを用いた(あるいは設定した)実験を行ってください。ネガティブ・コントロールには、サンプルのネガティブ・コントロールと、抗体のネガティブ・コントロールがあります。

  • サンプルのネガティブ・コントロール: サンプルのネガティブ・コントロールとしては、ターゲットが存在していないことが論文などで明らかになっている細胞や組織を使用します。ターゲット・タンパク質の遺伝子をノックダウン(KD)やノックアウト(KO)した動物あるいは細胞由来のサンプルも、ネガティブ・コントロールとして使用できます。遺伝子導入した細胞のリコンビナント・タンパク質の発現を検出する実験においては、遺伝子導入をしていない細胞をネガティブ・コントロールとすることをお勧めします。
  • 抗体のネガティブ・コントロール 一次抗体なし:
  • 一次抗体の反応溶液に、一次抗体を加えない実験です。ここで反応が認められた場合は、二次抗体のサンプルへの非特異的結合か、または基質・発色剤の非特異的な反応が疑われます。
  • 抗体のネガティブ・コントロール アイソタイプ・コントロール: 一次抗体の反応溶液に、一次抗体の代わりにアイソタイプ・コントロール抗体を加えて行う実験です。アイソタイプ・コントロール抗体としては、サンプルである組織切片とは決して反応しない抗体を用います。例えば自然界には存在しない化合物(DNP(Dinitrophenol)など)に対する抗体や、非哺乳動物由来のタンパク質(KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)など)に対する抗体などです。ホスト動物種とアイソタイプ(IgG2a、IgYなどのサブクラス)は、元の一次抗体と一致させてください。またバックグラウンド・レベルを揃えるために、一次抗体とアイソタイプ・コントロール抗体の濃度と同じにしてください。ここで反応が認められた場合も、二次抗体のサンプルへの非特異的結合か、または基質・発色剤の非特異的な反応が疑われます。
  • 抗体のネガティブ・コントロール 二次抗体なし: 二次抗体の反応溶液に、二次抗体を加えない実験です。ここで反応が認められた場合は、基質・発色剤の非特異的な反応が疑われます。


以上の内容につきましてご質問等がありましたら、テクニカル・サポートまでメール technical@abcam.co.jp または電話(03-6231-0940)でお問い合わせください。

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