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培養細胞を確認している時をイメージしてください。あなたはがっかりしています。ほとんどの細胞が死滅しているように見えるからです。死滅の原因は、新しいサプライヤーから得たサイトカインIL-6の最新のロットによる刺激と関連があるかもしれません。検体に含まれるエンドトキシンが多すぎたのかもしれません。安定性に問題があって、タンパク質が分解されたのかもしれません。あるいは、他の汚染物質が影響したかもしれません。いずれにせよ、数日間に及ぶ作業が無駄になったうえ、翌週は研究課題に取り組むのではなく、ロットの検証か新たなタンパク質の供給源を探さなくてはなりません。
当社のProtein Sciences部門の責任者Gráinne Dunlevy博士も、現場で同じような苦い経験をしたことがあり、お客様の気持ちが痛いほどわかります。Gráinne Dunlevy博士は、タンパク質研究者として16年以上の経験があります。長年にわたり製薬企業に勤務し、タンパク質の製造市場で必要とされる高品質なタンパク質が得られない社内研究者向けに、タンパク質の生産に従事してきました。
「同僚の研究者から毒性が十分に低く、安定して正しく折り畳まれており、すべての適切な翻訳後修飾(PTM)がなされた、アッセイやセレクション、免疫化用にコンタミフリーのタンパク質が市場に出回っていないといつも言われていました」と博士は当時を思い出します。「多くの場合、彼らはまず利用できる市販のものを使っていました。それがうまくいかなかった場合、私が発現させたタンパク質を使って一からやり直す必要があったのです」と当時を振り返ります。「多くの時間が無駄になりました。私は当時、皆が標準以下のタンパク質を受け入れていることに不満を感じていました」
Dunlevy博士は、現在、旧知の製薬企業の同僚だけでなく、社内のタンパク質発現部門の恩恵を受けていない研究者も含めて支援することを目指しています。
Dunlevy博士はケンブリッジにあるアブカムの技術開発部のVPであるBernd Gerhartz博士と共に、市場をリードする最高品質の市販用タンパク質の販売を決定しました。これらのタンパク質は、ヒトの天然タンパク質と同一であること、汚染がなく(コンタミフリーの)ロット間の高い一貫性が保証されています。この決定に従い、当社では、プレミアムグレードの生理活性タンパク質である、低分子ヒトタンパク質のカタログ製品増産を開始しました。
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Dunlevy博士がお答えします。「こちらのタンパク質製品群は、ヒトの天然タンパク質と同一にする必要がありました。それは、タグフリーで正しく折り畳まれており、最適な生理活性及び安定性を保証するための翻訳後修飾(PTM)がなされていることを意味します。汚染のないタンパク質、すなわち動物由来成分又はキャリア由来成分を含まない、超低濃度の内毒素にする必要がありました。最後に、すべてのロット間の同一性、純度、活性を確認します。以前のロットと同一でなければ出荷しません」
プレミアムグレードの生理活性タンパク質は哺乳動物の発現システムでのみ産生されます。これは最適化が難しく収量が少ないため、市販のタンパク質製造業界では希少性が高いものです。このような困難を乗り越える価値があるものを得ました。原核生物が産生する同等物とは異なり、哺乳類系で産生されるヒト由来タンパク質は、ヒト型と完全に同じように折り畳まれて修飾されます。細菌細胞には、発現するヒト由来タンパク質を正しく修飾したり折り畳んだりする細胞機構がありません。したがって、天然型の同一タンパク質を産生できるのは哺乳類系のみであり、対応する細菌で産出されたタンパク質よりも(構造が正しいため)安定しています。
また、哺乳動物の発現では、発現システムに検体を汚染する細菌が存在しないため、超低濃度の内毒素(0.005 EU/µg未満を保証)についても説明できます。
これらのタンパク質は、お客様に「タグフリー」で提供されます。プロテアーゼ部位をDNA構築物に導入することでタグフリーのタンパク質を得ます。つまり、発現させたタンパク質をタグを使用して精製し、その後使用したタグを酵素により切断除去してから再び精製します。「この2回目の精製手順では時間がかかり、各処理手順でタンパク質を失ってしまいます。しかし、高品質の製品を提供するためには、このような一手間を惜しみなく行う必要があるのです」と、Dunlevy博士は述べています。
タンパク質が生産されたら、質量分析法を用いてタンパク質同定を確認し、その後逆相HPLCにより純度を確認します(95%まで保証)。これにより、誤ったPTM、折り畳み、散在的に存在するプロテアーゼによる偶発的な切断に、フラグを立てることができます。通常同定をSDS-PAGEのみに依存するタンパク質製造業界の基準をはるかに上回る測定手順を踏んでいます。
「質量分析法とHPLCは、自社タンパク質の検査という点においては大手製薬企業では標準的な検証ですが、市販のタンパク質生産に適用されることはほとんどありません」とDunlevy博士は述べています。「しかし、SDS-PAGEゲルでバンドを目視確認しても、タンパク質の純度を正確に測定することはできません。タンパク質を脱色しすぎると、実際よりも純度が高いと錯覚することがあります。SDS-PAGEゲルでタンパク質の分子量を正確に測定することは不可能ですし、タンパク質が少し切断されているかどうかの判断もできないのです。当社でタンパク質の定量に逆相HPLCを使用する理由は、吸光度測定よりも正確だからです」
「すべてはタンパク質が何のために必要なのかに尽きます。ウェスタンブロットなどの生化学アッセイでは、タンパク質の存在と量を検出したいだけなので、ほぼ(100%ではない)同じのタンパク質で十分であることが多いでしょう。ただし、生存能力、増殖性、細胞毒性又は細胞死などを検査する細胞ベースアッセイでは機能的な生理活性が重要であるため、ヒト由来の天然タンパク質と同一のタンパク質を使用することが不可欠です」とDunlevy博士は述べています。
最適な機能的活性とは何でしょうか? 答えは、人体で見られる活性と同じ活性のことです。天然型の同一タンパク質リガンドは、その天然型受容体に最も迅速かつ安定的に結合し、酵素触媒作用が速くなります。
プレミアムグレードの生理活性製品は、ヒトの天然タンパク質の正確な再現を目的とするため、タグの除去は不可欠です。「例えば、市販のタンパク質を使用して抗体を作製する場合、抗体が標的タンパク質ではなくタグのエピトープを認識してしまう可能性があるため、タグ付きタンパク質を使用することはできません」とDunlevy博士は説明します。
この高品質なアプローチは費用対効果も高いと言えます。細菌を用いたものよりも哺乳類発現系を使用する方が安定性に優れており、タンパク質の保存状態が良く、分解や凝集の可能性も低くなります。つまり、「少しの量でも十分足りる」ということです。
また、研究が臨床使用を目的としている場合、天然の同一タンパク質の使用が不可欠で、開発プロジェクトの開始時から同じタンパク質の使用を維持することで、時間の節約となりそれだけ費用も抑えることができます。製品の切り替えに必要な検証の手順を省略することが可能で、初期結果が変性タンパク質を用いた際に生じるアーチファクトであった場合、その発見が遅れるリスクを軽減することが可能です。
同様に、ロット間の一貫性が高く、文書でにより十分に裏付けられたエビデンスが得られており、時間の大幅な節約も見込めます。各バッチの社内検証は不要となり、タンパク質のばらつきに起因するアッセイの失敗に悩まされることもないため、研究課題に集中できる時間が増えます。
アブカムは、一般研究の市場向けに最高品質の抗体製造に携わってきた長い歴史があります。Dunlevy博士はサイトカインなどの高規格のタンパク質製造にシフトすることは、自然な次のステップであると考えています。
「抗体を作製するには、その抗体に対するヒトと同一の抗原が必要でした」と彼女は説明します。「市場に出回っていないため、自分達で作らなければならなかったのです。つまり、長年蓄積してきた高品質なタンパク質の作製に関する専門知識を、必要とする人々にリソースとして供給することができれば、それはとても役に立つことだと考えたのです」
当社は現在、29種類のタンパク質を増殖因子及びサイトカインで構成される、プレミアムグレードの生物活性製品として提供しています。数ヵ月後にはタンパク質の種類をさらに増やす予定です。
著者: Susie Chapman博士
生理活性タンパク質の詳細についてはこちらをクリックしてご確認ください。
プレミアムグレードの生理活性タンパク質についてロット間での一貫性を実証したホワイトペーパーはこちら(英語ページ)からダウンロードできます。