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内容
「再現性の危機」に関する学術誌の記事は、多くのライフサイエンス実験の結果が再現できず、これらの結果に基づく結論は根拠に乏しいという事実を浮き彫りにしています。 この問題が起きる主な要因のひとつとして、粗悪な抗体が挙げられます1-7。 生命科学・医学研究業界における、特性評価が不十分な抗体の使用による世界的な損失は年間 8億ドル(880億円)と推定されており、誤った結論によりもたらされる影響、研究に費やした時間やその他のリソースの浪費はこの数字に含まれていません4。
抗体のロット間差により再現性の問題が生じることが多く、異なるロットの抗体を使用した場合、同じ実験条件でも、同様の結果が得られないことがあります1,8,9。 このため、抗体の適切なバリデーション(検証)には、ロット間の品質一貫性を示す証拠が必要になります。 しかし、市販されている抗体のバリデーションは標準化されておらず、製造業者によっても異なり、ロットごとに添付されているデータシートの質にも大きなばらつきがあります1。
抗体の作製方法により、抗体製造の一貫性(再現性)に差が生まれます (表1)。 ポリクローナル抗体は、免疫された動物から採取される血清の複数の B 細胞に由来する不均一な抗体の混合物であり、同じ抗原上の異なるエピトープを認識するため、ロット間のばらつきが大きくなる傾向があります。 このポリクローナル抗体と比較して、ハイブリドーマ技術により作製されるモノクローナル抗体ではロット間の一貫性が向上しますが、ハイブリドーマ細胞株における潜在的な genetic drift (遺伝的浮動)により、ロット間での再現性が損なわれる可能性があります。さらに、ハイブリドーマから作製されるモノクローナル抗体の 30% で、別の重鎖又は軽鎖の発現が確認されており、抗体の特異性が損なわれていたことが報告されています10。
再現性のある抗体を使用していない場合、ロット間での標準化作業やプロジェクト中に新しい試薬の開発が必要となったりするため、プロジェクトがタイムライン通りに進まないということが起こりえます。 この再現性に関する問題を克服し、研究開発コストを削減しつつ、さらにスムーズに研究を臨床へ移行させるには、抗体を遺伝子配列で定義し、リコンビナント・タンパク質として作製する必要があります4。
リコンビナント抗体は、既知の遺伝子セットから開発・製造されるため、設計・生産が管理された信頼性の高い抗体を作製できます。 ハイブリドーマから作製されるモノクローナル抗体では、遺伝子欠損、遺伝子変異や細胞株の変異などを受けることがありますが、リコンビナント抗体ではその作製方法によって、従来のポリクローナル抗体やモノクローナル抗体で見受けられていたロット間一貫性の問題を克服しています。 さらに、最先端の技術を用いて作製された高い親和性と特異性を兼ね備えたリコンビナント抗体は、従来の抗体と比べ低い濃度で使用できます。
ポリクローナル抗体 | モノクロナール抗体 | リコンビナント抗体 | |
作製方法 | ターゲットの抗原を用いて動物を免疫した後、免疫反応により生じた複数の B 細胞から生じた不均一な抗体の混合物として取得。 | 免疫後の動物から単一の抗体産生 B 細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合させ、一つの抗体を産生するハイブリドーマ株を作製 。 | 選択した抗体の遺伝子配列を発現ベクターにクローニングし、その後、発現ホストに導入してアニマルフリー抗体を作製 。 |
再現性の特徴 | 様々な抗原エピトープに対する複数の抗体で構成される。血清採取を複数回行った後、使用した動物は処分されるため、同じ抗体源を入手することは不可能。 | ポリクローナル抗体と比較して単一の抗体クローンでは、ロット間の一貫性が向上する。 潜在的な細胞株の変異及び遺伝子変異により産生される抗体が変化する可能性があるため、再現性に影響しかねない。 | 遺伝子配列が既知のマテリアルを使用するため、いつでも安定した生産が可能。 |
表1. ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リコンビナント抗体の作製方法と再現性の比較
特異性、再現性がともに高い抗体を提供するため、アブカムでは RabMAb ウサギモノクローナル抗体の大規模なポートフォリオを開発しました (図1) 。 様々なアプリケーションに使用できる、重要なターゲットに対する新しい抗体を年間約 1,000 種類発売しています。 当社は、抗体を安定して供給することで、研究におけるリコンビナント抗体の重要性の認識向上を推進し、お客様の研究に再現性のある結果をもたらす一助となれるよう、今後も尽力してまいります。
当社のリコンビナント RabMAb 抗体は、データシートに記載されている特定のアプリケーションに対して十分に検証されており、最適化されたプロトコールに従って各製品を標準化しています。 お客様のプロジェクトの規模にかかわらず、何度でも同じ性能を示す試薬を長期的かつ確実に提供できるよう検証プロセスが構築されています。
図1. リコンビナント抗体の特徴
RabMAb 抗 PD-L1 抗体[28-8](ab205921)の別々に製造された 5 つのロットでは、ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 組織の免疫組織染色 (IHC) で優れた一貫性を示し、ロット間で再現性のある染色が観察されました。
図2. RabMAb抗 PD-L1抗体[28-8] (ab205921) の5つのロットにおける、FFPEヒト胎盤の PD-L1 検出のロット間再現性:免疫染色 (IHC) は、BioCare Medical 社製抗原賦活化装置及びユニバーサル HIER 抗原賦活化試薬 (ab208572) を用いてマニュアル操作で実施した。一次抗体で 4°C で一晩インキュベートした後、ヤギ抗ウサギ二次抗体及び HRP 抗ヤギポリマー抗体 (ab209101) でインキュベートした。ヘマトキシリン対比染色を行った。発色基質として DAB を使用した。
免疫チェックポイント・ターゲット PD-L1 をトランスフェクトし、CHO-S 細胞に PD-L1を安定的に発現させた細胞で、 RabMAb 抗 PD-L1 抗体[28-8]の異なる 4 つのロットを試験した。 各ロットの抗体で免疫染色したところ、CHO-PD-L1 細胞は同等の強度とパターン(膜局在)で検出されました。 一方で通常の CHO-S 細胞では検出されませんでした。
図3. RabMAb 抗PD-L1抗体 [28-8](ab205921) の 4 つのロットにおける、免疫細胞染色での再現性: CHO-S 細胞及びPD-L1を安定的に発現する CHO-S 細胞 (CHO-PD-L1) を 4% PFAで固定し、0.1% Triton X-100 で透過処理後、ヤギ血清でブロッキングした。 PD-L1 一次抗体を添加して4°Cで一晩インキュベートした後、Alexa Fluor® 488 標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(ab150077) を1/1,000 で希釈して室温で 30分間インキュベートした。 対比染色として Alexa Fluor® 594 抗 α-チューブリン抗体[ DM1A] (Ab195889) を 1/200 で希釈して室温で 30分間インキュベートした。 核は DAPI により検出した。
RabMAb 抗 PD-L1 抗体 [28-8] の 4 つのロットを使用して、 PD-L1 を安定的に発現する CHO-S 細胞 (CHO-PD-L1) の PD-L1を検出しました。フローサイトメトリー分析では、複数の抗体ロット間で一貫したシグナル強度を示し、CHO-PD-L1 細胞 (陽性) と CHO-S 細胞 (陰性) において、各ロット間で同等レベルの明瞭なピークを示しました。
図4. RabMAb 抗 PD-L1 抗体 [28-8] (ab205921) の 4 つのロットにおける、フローサイトメトリー分析でのロット間一貫性:CHO-S 細胞 (青色の線) 及び PD-L1 を安定的に発現する CHO 細胞 (CHO-PD-L1:赤色の線) は、10% ヤギ血清を用いて4°C で 1 時間ブロッキングした。一次抗体で 4°C で 30 分間インキュベートした後、Alexa Fluor®488 標識ヤギ抗ウサギ二次抗体 (ab150077、1/2,000 希釈) を 4°C で 30 分間インキュベートした。 フローサイトメトリーによるデータ取得前に、7-AADで 4°C、 5 分間インキュベートした。
ウェスタンブロットによる検証では、 5 つの異なるロットの PD-L1 抗体が CHO-PD-L1 細胞及びU-87 MG 細胞のいずれについても、PD-L1 に対して特異的かつ同等レベルのバンドを検出しました。 非特異的なシグナルや交差反応性によるバンドは認められず、検証したリコンビナント抗体の全ロットにわたって高い一貫性を示しました。
図5. RabMAb 抗 PD-L1 抗体 (ab205921)の 5 つのロットでの、ウェスタンブロットによる CHO-PD-L1 細胞の PD-L1 検出のロット間再現性:CHO-S 細胞及び CHO-PD-L1 細胞を冷却した 1 × PBS で洗浄した後、RIPA 細胞溶解バッファーで 4°C で45 分間攪拌した。 出力 40 kWで 3 秒間、5~15 回 (10秒間隔) 、透明になるまで細胞を超音波処理した。 ライセートは、150Vで1時間、SDS-PAGE を行った後、PVDF に転写した。 ブロッティングはマニュアル 操作で行い、ヤギ抗ウサギ IgG H&L (HRP)二次抗体(ab97051) を 1:20,000 で希釈し室温で 1 時間インキュベートした後、ECL 反応を行った。
図6. RabMAb 抗 PD-L1 抗体 (ab205921) の 5 つのロット間における、ウェスタンブロットによる U-87 MG 細胞の PD-L1検出再現性: U-87 MG細胞を冷却した1 × PBS で洗浄した後、RIPA 細胞溶解バッファーで氷上・15 分間インキュベートした。 出力 40kW で 3 秒間、5~15 回 (10秒間隔)、透明になるまで細胞を超音波処理した。ライセートは、150V で 1 時間、SDS-PAGE を行った後、PVDF に転写した。ブロッティングはマニュアル 操作で行い、ヤギ抗ウサギ IgG H&L (HRP) 二次抗体(ab97051) を 1:20,000 で希釈し室温で 1 時間インキュベートした後、ECL 反応を行った。
配列が確定しているリコンビナント抗体の需要は拡大し続けており、特に科学研究分野でのデータ再現性に関連する問題解決策の 1 つとして使用されています3-5。 多くの研究者はターゲット特異性が向上したモノクローナル抗体を使用していますが 11、ライフサイエンスにおける実験結果の再現性と信頼性を向上させるには、リコンビナント抗体への移行が不可欠です3-6。
リコンビナント抗体の作製により、抗体のロット間のばらつきがなくなり、研究を長期間継続していくことのできる再現性のある結果を生み出すことができます。 このようにリコンビナント抗体の性能を長期的に保証することで、ロット間再現性の欠如に起因する潜在的なリスクを抑えながら、研究成果を診断薬や医薬品開発パイプラインへとスムーズに移行させることが可能になります。