免疫細胞マーカー・ポスター

ヒトおよびマウス免疫細胞のフェノタイピングに適したマーカーをまとめました。250 以上もの文献情報を元にしています。


  • T 細胞や B 細胞などのリンパ系細胞、好中球などの骨髄系細胞、さらには造血前駆細胞や幹細胞などをタイピングするためのマーカーを、簡単に選択できます。
  • ヒトとマウスに分けています。
  • 異なる細胞種の共通するマーカーについても記載しています。

ポスターの PDF 版をこちらからダウンロードできます。


免疫システムは多くの異なる細胞種から成り立っており、それらが相互作用し、協調して免疫応答を行なっています。免疫学の研究においては、それらの中から特定の細胞種あるいはグループを同定し、場合によっては単離や除去を行うことがありますが、その際にはこれら細胞の表面上に発現するマーカー分子の発現・存在パターンの違いを利用します。このようなイムノフェノタイピング(Immunophenotyping)は通常、各種マーカーに対する抗体を用い、フローサイトメトリーよって行なわれます。

マーカーの発現パターンは、細胞の種類のみならず、同じ細胞でも分化の段階によっても異なります。一方、あるマーカーが異なる細胞種で発現している場合もあります。そのため、特定の細胞種、グループ、分化段階のイムノフェノタイピングを行う際に、適切なマーカーを選択することは簡単ではありません。そこでアブカムは 250 以上もの文献を調べ、各文献を関連付け、マーカーを分類して表にまとめ、上記の図(ポスター)を作成しました。

免疫細胞のマーカー


下の表のマーカー名をクリックしたリンク先には、そのマーカーに対するアブカムの抗体製品のリストがあります。なお、免疫細胞上にある抗原の多くは Clusters of differentiation(CD)の命名法に従って名前が付けられていますので、図および表に記載されているマーカーの多くも、名前に「CD」が付 いています。


Human

細胞種

マーカー

引用論文

HSC

CD34+CD38-CD45RA-

CD49+,CD90/Thy1+

1, 2, 3, 4, 5, 6

MPP

CD34+CD38-CD45RA-,

CD90/Thy1-

3, 7, 8, 6, 9

CLP

CD34+CD38+CD10+,

CD45RA+

10, 3

CMP

CD34+CD38+CD7-CD10-,

CD45RA-CD90/Thy1-CD135+

9, 7, 11, 12

MEP

CD34+CD38+CD7-CD10-,

CD45RA-CD135-IL3Rα-

7, 13, 14, 11, 12

GMP

CD34+CD38+CD10-CD45RA+,

CD123+CD135+

7, 14, 15, 11, 12

NK 細胞*

CD3-CD56+CD94+NKp46+

16, 17, 18, 19, 20

T 細胞*

CD3+

21, 22, 20

B 細胞*

CD19+

23, 24, 25, 20, 26

単球*

CD14+

14, 27, 26

マクロファージ*

CD11b+CD68+CD163+

28, 29

樹状細胞*

CD11c+HLA-DR+

30, 14

好中球

CD11b+CD16+CD18+CD32+,

CD44+CD55+

31, 32, 33, 20, 26

好酸球

CD45+CD125+CD193+,

F4/80+, Siglec-8+

14, 34, 35, 36, 20

好塩基球

CD19-CD22+CD45low,

CD123+

14, 37, 38, 20

マスト細胞

CD32+CD33+CD117+,

CD203c+FcεRI+

39, 40, 41

赤血球

CD235a+

42, 26

巨核球

CD41b+CD42a+CD42b+,

CD61+

14, 13, 43

血小板

CD41+CD42a+CD42b+,

CD61+

20, 44


Mouse

細胞種

マーカー

引用論文

LT-HSC

Sca-1+CD117+CD34-CD48-,

CD49blowCD135-CD150+

45, 46, 47, 5, 48, 49, 11

IT-HSC

Sca-1+CD117+CD34-,

CD49highCD135-CD150+

11, 50, 51, 46

ST-HSC

Sca-1+CD117+CD34+CD48-,

CD135-CD150-

52, 4, 53, 54

MPP

Sca-1+CD117+CD34+CD48-,

CD135+

11, 55, 52

LMPP

Sca-1+CD117+CD34+

CD127+, CD135+

11, 56, 57

CLP

Sca-1+CD117+CD93+,

CD127+, CD135+

11, 58, 10, 59

CMP

CD117+, CD16/32-CD34+,

CD41+Sca-1-

56, 11, 4, 57

GMP

CD117+, CD16/32+CD34+,

CD64+Sca-1-

11, 57, 4

MEP

CD117+, CD16/32-CD34-,

CD64-CD127-Sca-1-

11, 60, 4, 57

NK 細胞*

CD11b+CD122+NK1.1+,

NKG2D+NKp46+

58, 61

T 細胞*

CD3+

62, 41

B 細胞*

B220+

63

単球*

CD11b+CD115+CX3CR1+,

Ly6C+

64, 27, 65

マクロファージ*

CD45+CD64+F4/80+MerTK+

65, 66, 67

樹状細胞*

CD11c+CD24+CD45+,

MHCII+Siglec-F-

67, 66, 30

好中球

CD11b+CXCR4+MHC II-

Gr-1+(Ly-6G+)Siglec-F-

68, 66, 69, 70, 71

好酸球

CCR3+CD11b+IL-5Rα+, MHCII-Siglec-F+

34, 72, 68, 66, 71

好塩基球

CD41+CD49b+CD117-,

FcεRI+

73, 74, 75

マスト細胞

CD45+CD117+FcεRI+,

Integrinβ7+

76, 77, 78, 79

赤血球

Ter119+

80, 81

巨核球

CD9+CD41+CD42b+,

CD117+,CD150+CXCR4+

82, 83, 84, 60, 85

血小板

CD9+CD41+GPIa/IIa+,

GPIb/V/IX+GPVI+

85, 86, 87, 88, 81

*ここで示されているマーカーは、全ての細胞サブセットに共通のものです(例えば、T 細胞マーカーは、キラー、ヘルパー、制御性全ての T 細胞に共通)。

それぞれのマーカーに付されている “+” と “–” は、その細胞で発現しているか(+)、またはしていないか(-)を示しています(例えば、CD10+ は CD10 を発現)。また、“high” および “low” は、発現の程度を示しています。


データの例 抗 Integrin alpha 5 (CD49e) [EPR7854] (ab150361) A: ライゼートをサンプルとしたウエスタン・ブロッティング。Lane 1 ヒト膀胱組織、Lane 2 HT-1080 細胞、Lane 3 HeLa 細胞、Lane 4 U937 細胞。B: U937 細胞をサンプルとした免疫蛍光染色。緑 ab150361(Integrin alpha 5)、青 DAPI(核)。C: ヒト腎臓組織をサンプルとした免疫組織染色。D: HeLa 細胞をサンプルとしたフローサイトメトリー。赤 ab150361(Integrin alpha 5)、黒 アイソタイプコントロール、青 抗体なし。


メモ


免疫学の研究は発展が早く、現段階で正しいと思われていることでも、すぐに覆される可能性があります。例えば上の図で示されている、造血幹細胞(HSC)から様々な前駆細胞を経てリンパ細胞系列や骨髄細胞系列へと進む経路についても異論はあるようです。

免疫細胞の発生、分化、成熟についてさらに詳しく知りたいのであれば、「参考文献」の 89、90、91 を読んでいただくと共に、最新の文献を常にチェックしていくこともお勧めします。


謝辞


このページの表および図を作成するに当たっての文献の調査およびマーカーの選定は、英国ケンブリッジ大学、獣医学部の免疫学者 Alessandro Rizzo によって行われました。


文献

文献リスト

登録