Extracellular vesicles: an introduction 細胞外小胞とは

細胞外小胞(EV)は、細胞間のコミュニケーションを媒介し、免疫応答や血液凝固などさまざまなプロセスに関与しています

アポトーシスの過程で細胞が小胞を放出することは以前から知られていましたが、健康な細胞も同じく小胞を放出していることが明らかになり、注目を集めています。こうした細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EV)については、その由来や特徴によっていくつかの種類があることが明らかになっていますが、それらに研究者が独自に Ectosome(エクトソーム)、Microparticle(マイクロパーティクル)、Shedding microvesicle(分泌マイクロベシクル)などといった名前をつけたことが、混乱を招いているようです。ここでは主に細胞内での由来によってExosomes(エクソソーム)、Microvesicles(MV; 微小小胞体)、Apoptotic Bodies(アポトーシス小体)の 3 種類に分類し、それらの特徴をまとめました。


エクソソームMVアポトーシス小体
由来エンドサイトーシス・パスウェイ細胞質膜細胞質膜
大きさ40-120 nm50-1,000 nm500-2,000 nm
機能細胞間コミュニケーション細胞間コミュニケーションファゴサイトーシスの誘導
マーカー分子Alix, Tsg101, tetraspanins (CD81, CD63, CD9), flotillinIntegrins, selectins, CD40Annexin V, phosphatidylserine
構成成分タンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーディング RNA)タンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーディング RNA)断片化された核、細胞小器官(オルガネラ)

アポトーシス小体がアポトーシスを起こした細胞から放出されるのに対し、エクソソームと MV はいずれも健康な細胞から放出されますが、これら二つにはいくつかの点で違いがあります。エクソソームは多胞性エンドソーム(MVE)の内部にエンドソームの膜が陥没して形成されます。そのため Rab GTPase、SNARE、Annexin、Flotillin といったエンドソーム結合タンパク質が豊富に含まれます。これらのうち Alix や Tsg101 はエクソソーム・マーカー分子として用いられます。その他にも膜貫通タンパク質ファミリーである Tetraspanin テトラスパニン(CD63、CD81、CD9 など)もエクソソームに豊富に含まれ、マーカー分子として用いられます。この Tetraspanin は、原形質膜のマイクロドメインに集合する性質を有しています。MV は細胞膜が陥没して形成されます。MV に含まれるタンパク質についての研究はまだ十分ではありませんが、現段階ではマーカー分子として Integrin(インテグリン)、Selectin(セレクチン)、CD40などが用いられています。


細胞外小胞と細胞間コミュニケーション、疾患

エクソソームと MV は共に、多くの細胞種において、近接または遠距離細胞間のコミュニケーションに関与しています。免疫系においては、細胞から放出されたエクソソームが抗原提示小胞として機能し、抗腫瘍免疫における応答や、炎症を抑制する免疫寛容性などを誘導します。神経系においては、ミエリン鞘の形成、神経突起の伸展、神経細胞の生存維持に関わっていると考えられています。血液凝固系においては、血小板および単球由来の MV が血液凝固カスケードに関わる第 X 因子などの複合体形成を媒介し、細胞を融合させて血栓形成を誘導します。また炎症の過程において MV は、刺激の種類や放出される細胞によって、抑制か亢進かその作用が変わります。どちらのケースでも MV がターゲット細胞に結合することによってその細胞から炎症反応を調節するサイトカインが放出されます。


細胞外小胞と疾患

EV はいくつかの疾患に関与していることも知られています。神経変性疾患においては、プリオンや β アミロイド・ペプチドなどの病原性タンパク質が、他の細胞への伝播するときにエクソソームを利用していることが知られています。また腫瘍細胞は免疫反応を抑えるため EV を活用して、T 細胞やナチュラルキラー細胞の不活性化や制御性 T 細胞の分化の亢進を行なっていると考えられています。

バイオマーカーとしての可能性

EV 内におけるメッセンジャー RNA(mRNA)やマイクロ RNA(miRNA)などの核酸の存在が発見されたことは、一つのブレークスルーとなりました。RNA は選択的に EV に取り込まれ、放出された EV は元の細胞の RNA 情報を他の細胞に伝達できることになります。

EV は血液や尿などさまざまな体液に含まれ、体内を循環しています。EV には放出細胞由来の情報が含まれていることから、バイオマーカーとして使用できる可能性があります。核酸は体液中の含有量が非常に低く、通常バイオマーカーとしては利用しにくいのですが、これを高濃度に含む EV を供給源として利用すれば、核酸をバイオマーカーとして用いた診断の精度を桁違いに向上させることができるかもしれません。現在特に注目されているのが腫瘍マーカーとしての利用です。血中に存在する EV 中の miRNA のプロファイリングが腫瘍の種類や増殖部位を診断するための有用との報告が数多く報告されています。

細胞外小胞の解析法

EV の解析における課題の一つに、エクソソームと MV を区別する方法の確立があります。エクソソームと MV は、由来やサイズ、形態、浮遊密度など、さまざまな性質の違いがありますが、正確に分離することは難しいのが現状です。現在最も一般的な分画法は遠心分離で、浮遊密度、浮上速度、そしてサイズの違いで EV をエクソソームと MV に分画します。分画されたそれぞれの確認にはイムノブロット、フローサイトメトリー、質量分析、電子顕微鏡などが用いられます。これらのうち最も便利なのは定性的かつ定量的に解析できるフローサイトメトリーです。イムノブロットと質量分析は、定量的な解析に難があります。また電子顕微鏡はサンプル処理が複雑で、サンプルの数が多い場合には適していません。


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