B 細胞イムノフェノタイピング

B 細胞は、特異的抗原に対する抗体の産生および放出を担う、体液性免疫の中心となる細胞です。


B 細胞(B cell)は免疫細胞であるリンパ球(Lymphocyte)の一種で、抗体を介した免疫応答である体液性免疫(humoral immunity)において、抗体を産生するという重要な役割を担う細胞です。それゆえこの細胞群を研究することは、自己免疫疾患やアレルギーなど、さまざまな疾患を克服する上で非常に重要であると考えられます。


幹細胞からB細胞への分化

B 細胞は骨髄の造血幹細胞(hematopoietic stem cell)に由来し、骨髄で分化・成熟します。その過程を通じて B 細胞の遺伝子中では、抗体(イムノグロブリン; Immunoglobulin)遺伝子座に再構成と組換えが起こり、その結果としてさまざまな配列の抗体遺伝子が形成されます。造血幹細胞はリンパ系幹細胞(lymphoid stem cell)を経て、Igα および Igβ を発現するプロ B 細胞(pro-B cell)に分化します。そしてさらに、表面上にプレ B 細胞受容体(preBCR; Igμ)を発現するプレ B 細胞(pre-B cell)を経て、表面上に IgM や IgD などを含む B 細胞受容体(B cell receptor; BCR)を発現するナイーブ B 細胞(naïve B cell)となります。その後これらの細胞は骨髄を離れ、脾臓や末梢リンパ組織に移行します(Cambier JC, et al. Nat Rev Immunol. 2007)。


B-2 細胞のサブタイプ

B-2 細胞(B-2 cell)とも呼ばれる通常の B 細胞(conventional B cell)は、特異的抗原による活性化を経て 2 種類のサブタイプ、形質細胞(plasma cell)あるいは記憶細胞(memory cell)のいずれかに分化します。

体内を循環するナイーブ B 細胞は、その表面上の B 細胞受容体と反応する特異的な抗原タンパク質に遭遇すると、受容体媒介性エンドサイトーシス(Receptor-mediated endocytosis)を介してその抗原タンパク質を細胞内に取り込みます。細胞内で分解されてペプチドとなった抗原は、MHC II と複合体を形成した上で細胞表面上に提示されます。この複合体を T 細胞表面上の T 細胞受容体(T cell receptor; TCR)が認識し結合すると、その結合による刺激と、結合した T 細胞から産生されるサイトカイン(cytokine)の作用により、そのナイーブ B 細胞は活性化します。

形質細胞:液性免疫系の基幹となる細胞です。特定の抗原によって活性化した B 細胞は、急速な増殖および体細胞超変異を経て、その抗原に対して親和性を有する抗体(主に IgG または IgA)を産生する専門の細胞、形質細胞へと分化します。

記憶細胞:活性化した B 細胞の一部が分化する細胞で、その名の通り抗原を記憶し、病原体などに由来する抗原が再び出現した際に、免疫系がすばやく対応することを可能とします。免疫系が抗原に再び遭遇すると、記憶細胞は濾胞ヘルパー T 細胞によって刺激され、すみやかに形質細胞へと分化します。なお抗体を産生する形質細胞は、その寿命が数週間と短いため、このような作用を担うことはできません。


その他 B 細胞のサブタイプ

B-1細胞(B-1 cell): B-2 細胞の一種ある形質細胞と同様、抗体を産生する細胞ですが、その活性化は病原体の多糖類などの認識によって起こり、B-2 細胞のような複雑なプロセスは必要としません。産生する抗体のクラスは IgM です。胎児および新生児の時期から存在し、生後すぐでは B 細胞の主体を占めます(その後 B-2 細胞の割合が増えていきます)。

辺縁帯 B 細胞(marginal zone B cell): 脾臓の辺縁帯(marginal zone; MZ)にのみ見出される成熟記憶 B 細胞です。トール様受容体(Toll-like receptor; TLR)によって活性化され、必ずしも B 細胞受容体を介する活性化は必要としません。

濾胞 B 細胞(follicular B cell): 主に脾臓およびリンパ節の濾胞(follicular)に見出される不活性な B 細胞です。T 細胞を介した活性化が必要で、形質細胞と記憶細胞のいずれにも分化することができます。

制御性 B 細胞(Breg cell): IL-10 などのサイトカインを分泌することによって、炎症などの免疫応答を負に調節する細胞です。数としては多くありませんが(ヒトで B 細胞全体の約 0.5 %)、自己免疫疾患の抑制に大きな寄与をしていると考えられます。


フローサイトメトリーによる B 細胞の免疫表現型解析

各細胞タイプが特異的に発現している、複数のマーカーに対する抗体とフローサイトメトリーを用いることにより、それぞれの細胞を免疫学的に分別(immunophenotyping)することができます。未成熟 B 細胞は CD19、CD20、CD34、CD38および CD45R を発現していますが、IgM は発現していません。一方ほとんどの成熟 B 細胞は IgM および CD19 を発現しています(Kaminski DA. Front Immunol. 2012)。活性化された B 細胞はアポトーシスの調節因子である CD30 を発現しており、形質細胞は CD19 の発現を失いますが CD78 を発現するようになります。記憶細胞の分別には CD20 および CD40 を用います。この細胞は、細胞表面に存在する免疫グロブリンのタイプにかかわらず、CD80 および PDL-2 によってさらに分別することもできます(Zuccarino-Catania GV et al. Nat Immunol. 2014)。またすべての細胞タイプを通じ、分別には IL-10 などのサイトカインや、CCR3 などのケモカイン受容体など、細胞間の免疫応答メッセージに関与する分子の検出も有用です。

B 細胞のタイプとイムノフェノタイピングを行うために有用なマーカーをまとめました。

B 細胞タイプ

マーカー

B 細胞全般
(形質細胞除く)

IgMCD19

活性化 B 細胞

CD19CD25CD30

形質細胞

IL-6, IgGCD27CD38CD78CD138CD319

記憶細胞

IgAIgGIgECD20CD27CD40CD80, CXCR3CXCR4CXCR5CXCR6, PDL-2

辺縁帯 B 細胞

CD1CD21CD27, Notch2

濾胞 B 細胞

IgDCD21CD22CD23

制御性 B 細胞

IgDIL-10, CD1CD5CD21CD24TGFβ, TLR4

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