ネクロトーシスのキープレーヤー MLKL

MLKLはネクロトーシスにおいて重要な役割を果たす分子で、さまざまな疾病にも関与しています。


機能

MLKL(Mixed lineage kinase domain-like)はプロテインキナーゼ様ドメインを有するいわゆる偽キナーゼ(pseudokinase)であり、TNF(Tumor necrosis factor; 腫瘍壊死因子)により誘導されるネクロトーシス(necroptosis)において、RIP3(Receptor-interacting protein kinase 3)の基質となります。

ネクロトーシスは近年になって提唱された概念であり、TLR(Toll-like receptors)、インターフェロン、核酸センサーなどのメディエーターで誘導される、プログラムされたネクローシスと言える細胞死です。このネクロトーシスのシグナル伝達において MLKL と RIP3 は、RIP1 と共にネクロソーム(necrosome)と呼ばれるネクローシス・シグナル伝達複合体を形成します。ネクロソームの中で MLKL は、RIP3 により Thr357 および Ser358 がリン酸化されます。リン酸化された MLKL はオリゴマーを形成して細胞膜と結合し、Na+ および Ca2+ を流入させて細胞膜を破壊するきっかけとなる穴を形成します2–4

疾患との関連性

ネクロトーシスのメカニズムについては不明な点が数多く残っていますが、がん、神経疾患、循環器系疾患、自己炎症性疾患、などと関連すると考えられています5,7–10。中でもネクロトーシスの過程で活性化する RIP3 と MLKL は、いくつかの疾患の発症との関連が示唆されています5。例えば小児性炎症性腸疾患(IBD)における腸炎の発症と MLKL および RIP3 の発現レベルが関連することが示されています11。また MLKL をノックダウンもしくはノックアウト(KO)したモデル動物では、ネクロトーシスや局所的な炎症への耐性が生じることも、疾患との関連を示唆します12–14

多発性硬化症(MS)では、Caspase 8 の不活性化および RIP1、RIP3、MLKL の活性化によりネクロトーシスが起こり、オリゴデンドロサイトが変性します15。さらに多発性硬化症患者から採取されたサンプルではコントロールに比べて、リン酸化 MLKL が増加していることが認められています15

MLKL とそのリン酸化がネクロトーシスにおいて重要な役割を果たしているということは間違いありませんが、その詳細なメカニズムや疾患との直接の関連性などについて、正確なことは明らかになっていません。その研究の進展には、未修飾 MLKL とリン酸化 MLKLを区別する必要が出てきます。アブカムの KO 評価済ウサギ・モノクローナル MLKL 抗体(ab184718)、Ser358 リン酸化 MLKL に対するウサギ・モノクローナル抗体(ab187091)は、このような用途に最適な抗体です。ab187091 は薬剤誘導の肝損傷で起こるネクロトーシスについての論文で実績があります4。また、ネクロトーシスにおいて同じく重要な役割を果たしている RIP3 についても、アテローム性動脈硬化モデルマウスでのネクロトーシスについての論文で実績のある、Ser232 リン酸化 RIP3 に対するウサギ・モノクローナル抗体(ab195117)があります16

  • Ser358 リン酸化 MLKL 抗体(ab187091
  • Ser232 リン酸化 RIP3 抗体(ab195117


治療ターゲットとして

MLKL はネクロトーシスが関係する疾患の治療ターゲットとして注目されています。具体的には MLKL に低分子化合物を作用させて偽キナーゼ・ドメインの活性を調節することで、特定の環境下でネクロトーシスを亢進や阻害させる試みなどが行われています。


References

1.   Sun, L. et al. Mixed lineage kinase domain-like protein mediates necrosis signaling downstream of RIP3 kinase. Cell 148, 213–227 (2012).

2.   Galluzzi, L., Kepp, O. & Kroemer, G. MLKL regulates necrotic plasma membrane permeabilization. Cell Res. 24, 139–40 (2014).

3.   Fuchs, Y. & Steller, H. Live to die another way: modes of programmed cell death and the signals emanating from dying cells. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 16, 329–344 (2015).

4.   Wang, H. et al. Mixed Lineage Kinase Domain-like Protein MLKL Causes Necrotic Membrane Disruption upon Phosphorylation by RIP3. Mol. Cell 54, 133–146 (2014).

5.   Pasparakis, M. & Vandenabeele, P. Necroptosis and its role in inflammation. Nature 517, 311–320 (2015).

6.   Czabotar, P. E. & Murphy, J. M. A tale of two domains - a structural perspective of the pseudokinase, MLKL. FEBS J. 282, 4268–4278 (2015).

7.   Brenner, D., Blaser, H. & Mak, T. W. Regulation of tumour necrosis factor signalling: live or let die. Nat. Rev. Immunol. 15, 362–374 (2015).

8.   Degterev, A. et al. Chemical inhibitor of nonapoptotic cell death with therapeutic potential for ischemic brain injury. Nat Chem Biol 1, 112–119 (2005).

9.   Luedde, M. et al. RIP3, a kinase promoting necroptotic cell death, mediates adverse remodelling aftermyocardial infarction. Cardiovasc. Res. 103, 206–216 (2014).

10. Rickard, J. A. et al. RIPK1 regulates RIPK3-MLKL-driven systemic inflammation and emergency hematopoiesis. Cell 157, 1175–1188 (2014).

11. Pierdomenico, M. et al. Necroptosis is active in children with inflammatory bowel disease and contributes to heighten intestinal inflammation. Am. J. Gastroenterol. 109, 279–87 (2014).

12. Murphy, J. M. et al. The pseudokinase MLKL mediates necroptosis via a molecular switch mechanism. Immunity 39, 443–453 (2013).

13. Wu, J. et al. Mlkl knockout mice demonstrate the indispensable role of Mlkl in necroptosis. Cell Res. 23, 994–1006 (2013).

14. Dannappel, M. et al. RIPK1 maintains epithelial homeostasis by inhibiting apoptosis and necroptosis. Nature 513, 90–4 (2014).

15. Ofengeim, D. et al. Activation of Necroptosis in Multiple Sclerosis. CellReports 10, 1–14 (2015).

16. Meng, L. et al. RIP3-mediated necrotic cell death accelerates systematic inflammation and mortality. Proc Natl Acad Sci USA. 112, 11007-11012 (2012).

登録