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グリア細胞と脱髄のプロセスをテーマにしたポスター “Glia and demyelinating diseases” です。PDF 版(250 kB)のダウンロードをこちらからどうぞ。
グリア細胞(Glia)の一種であるオリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)やシュワン細胞(Schwann cell)により構成され、ニューロン軸索の周りに存在している絶縁性リン脂質であるミエリン鞘(髄鞘; myelin sheath)の崩壊を脱髄といい、ニューロンにおけるシグナル伝達の異常を引き起こします。そしてこれを原因とする疾患を脱髄疾患(demyelinating diseases)と呼ばれます。ミエリン鞘の形成や脱髄のメカニズムには、ミクログリア(microglial cells)やアストロサイト(astrocyte)など、様々なグリア細胞が重要な役割を担っており、盛んに研究が進められています。
中枢および末梢神経系における脱髄は、炎症性疾患、ウイルス感染、有毒な傷害などに応答して起こり得ます。脱髄疾患には多発性硬化症(multiple sclerosis ; MS)など様々な種類があります(表 1)。これらの疾患については、病理学的特徴は詳細に調べられているものの、その病因については依然として多くの謎が残されています。グリア細胞に関する研究は、これら疾患の治療法や薬剤の開発に役立つものと期待されます。
表 1 : 脱髄疾患 | |
MS | 多発性硬化症(Multiple sclerosis) |
ADEM | 急性散在性脳脊髄炎(Acute-hemorrhagic leucoencephalitis) |
CCPD | 中枢・末梢連合脱髄症(Combined central & peripheral demyelination) |
GBS | ギラン・バレー症候群 (Guillan-Barré Syndrome) |
NMO | 視神経脊髄炎 (Neuromyelitis Optica) |
PML | 進行性多巣性白質脳症(Progressive multifocal leukoencephalopathy) |
SSPE | 亜急性硬化性全脳炎(Subacute scerosing panencephalitis) |
脱髄に至る一連のプロセスは非常に複雑ですが、その病理組織においてしばしば自己抗体(Autoantibody)が認められることから(表 2)、自己免疫もその原因の一つであると考えられています。
表 2 : 脱髄組織に認められる自己抗体 | |
Neurofascin | CCPD |
Myelin components | GBS |
Aquaporin 4 | NMO |
オリゴデンドロサイトによって産生されるミエリンは、脱髄の開始時に軸索周囲から失われ、オリゴデンドロサイト自身はアポトーシス細胞死を引き起こします。そして末梢血由来の B 細胞、T 細胞およびマクロファージが同時に流入し、中枢神経系におけるミクログリアの活性化および増殖が起こり、炎症状態となります。
脱髄疾患におけるこのような炎症は、内皮細胞によって形成され中枢神経系との境界を成す血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)の欠陥または損傷によって悪化します。そのような状態では、血液脳関門において Claudin-5 および Occludin の発現が減少し、ZO-1 の再配置が起こります。
ミクログリアは活性化すると、M1 や M2 といった表現型を示します。M1 ミクログリアは iNOS、TNFα、TLR、HLA-DR などの前炎症性分子(pro-inflammatory molecule)の発現を特徴とし、脱髄の早期に認められます。それらは周囲からのマクロファージの浸潤、ミエリン破片、アポトーシス細胞の抗原提示、ケモカインやサイトカインの産生などに関与しています。
一方 M2 ミクログリアは、Arg-1 および TGFβ などの発現を特徴とし、脱髄プロセスの後期に認められます。この細胞は露出した軸索を再髄鞘化することができる、オリゴデンドロサイト前駆細胞のリクルートに関与することが知られています。事実、M2:M1 ミクログリアの比率と再ミエリン化は関係があるとされています。
アストロサイトはニューロンに対する保護や BBB の維持を行っていますが、炎症性脱髄において重要な関与をしていることも知られています。ミエリンが軸索から失われると、アストロサイトは多くの中枢神経系疾患の特徴である星状膠症(gliosis)として知られる増生を引き起こし、GFAP(Glial fibrillary acidic protein)を上方制御します。
ミクログリアと同様アストロサイトも、数多くの炎症関連因子を発現し、抗原提示を行い、常在ミクログリア、浸潤 T 細胞、B 細胞、マクロファージなどに大きな影響を与える、サイトカインやケモカインを産生します。T 細胞媒介性炎症(T-cell mediated inflammation)を制限し、神経保護分子(neuroprotective molecule)の上方制御を引き起こすことができる点で、ミクログリアと同様これらの応答は、前炎症性で脱髄を抑制し、またニューロンを保護する機能を有すると言えます。