アブカムでは最適な動作のために Google Chrome など最新ブラウザでの閲覧を推奨します。
Take a look at our BETA site and see what we’ve done so far.
Search and browse selected products
Purchase these through your usual distributor
ミトコンドリア膜電位
ミトコンドリア膜の電位差(ΔΨm)は、ミトコンドリアの重要な働きである ATP を産出する呼吸鎖の機能を維持するために、重大な意味を持つものです。その電位はミトコンドリア膜透過性遷移孔(Mitochondrial permeability transition pore; MPTP)が開くと消失し、続いてシトクロム C(Cytochrome C)の細胞質へ流出が起こります。
電位差の検出法の一つに、正電荷を帯びたカチオン性蛍光色素を使った方法があります。このような蛍光色素(膜電位プローブ)は負に帯電している、膜の内側に蓄積します。健康な細胞のミトコンドリアは強く負に帯電し膜電位差が大きいため、プローブの蓄積が多いですが、機能不全に陥ったミトコンドリアでは電位差が小さく、プローブの蓄積は少なくなります。蛍光顕微鏡下では定性的な観察になりますが、フローサイトメーターやマイクロプレート分光光度計を用いると、定量的な解析を行うことが可能となります。
下の表に、アブカムで取り扱っているミトコンドリア膜電位プローブを示します。
プローブ(いずれもカチオン性の蛍光色素) | 色調 | Ex(励起波長)/Em(蛍光波長) | 使用できる機器と適した実験 | |
TMRE: アクティブなミトコンドリアに素早く蓄積する赤色-オレンジ色の色素。ミトコンドリアの不活性化により膜電位が低下すると、この色素を留めておくことができなくなる。 | 健康な細胞:明るいオレンジ色 アポトーシス細胞:弱いオレンジ色 | 549 nm / 575 nm | タイムラプス蛍光顕微鏡、免疫蛍光染色。 | |
JC-1: ミトコンドリアに電位依存的に蓄積する緑色-赤色の色素。赤色と緑色の蛍光の強さの割合はミトコンドリア膜電位の消失状態を示す。 | 健康な細胞:赤色 アポトーシス細胞:緑色 | 530 nm / 590 nm | フローサイトメトリー、マイクロプレート分光光度計。比較分析に最適。 | |
JC-10: JC-1の誘導体で、水溶性の向上と膜電位変化に対する感度の上昇が図られている。 | 健康な細胞:オレンジ色 アポトーシス細胞:緑色 | 490 nm / 520 - 570 nm | フローサイトメトリー、マイクロプレート分光光度計。比較分析に最適。 | |
MitoOrange dye および MitoNIR dye: 健康な細胞においてミトコンドリアに蓄積する赤色~近赤外の色素。ミトコンドリア膜電位の消失により、蛍光強度が減少する。 | 健康な細胞:赤色もしくは近赤外(NIR) アポトーシス細胞:シグナルが弱い | MitoOrange: 540 nm / 590 nm MitoRed: 635 nm / 660 nm | フローサイトメトリー、マイクロプレート分光光度計。アポトーシスの多様性解析(Multiparametric study)。 |
酸化的リン酸化のイオノフォア脱共役剤である FCCP (Carbonyl cyanide 4-(trifluoromethoxy) phenylhydrazone) (ab120081)で処理された細胞は、ミトコンドリア膜電位が消失する。アポトーシス研究において非常に優れたポジティブ・コントロールを作製できる。
HeLa 細胞(A)と Jurkat 細胞(B)を 200 nM TMRE - Mitochondrial membrane potential assay kit (ab113852) で 20 分間染色し、その後すぐに観察した。
シトクロム C の流出
ミトコンドリア膜透過性遷移孔が開かれると、膜電位が消失すると共に、ミトコンドリア膜内部(マトリクス)のシトクロム C が細胞質中へ流出されます。この流出が引き金となって、他のさまざまなアポトーシス・カスケードの進行が促されます。
これはミトコンドリアにとって、そして細胞自体にとって、壊滅的なイベントと言えます。なぜならひとたびシトクロム C の流出が始まると、アポトーシス・カスケードはもう後戻りできないポイントまで進んでしまい、ここから細胞がリカバリーすることはまずないからです。
シトクロム C の流出を検出する方法としては、細胞を分画し、細胞質画分におけるシトクロム C の存在をウエスタン・ブロッティングにより検出するのが一般的です。このような実験では、それぞれの画分同士でコンタミネーションが起こっていないことを、細胞画分マーカーやオルガネラ・マーカーで必ず確認します。
3 種類の細胞 Jurkat、HeLa、143B の、コントロール(Null)、Fas を介してアポトーシスを誘導した細胞(FAS)、Staurosporine でアポトーシスを誘導した細胞(STS)それぞれの細胞質画分(C)とミトコンドリア画分(M)について、各種オルガネラ・マーカー抗体を混合した Apotrack™ Cytochrome C Apoptosis WB Antibody Cocktail (ab110415) を用いてウエスタン・ブロッティングを行った。
シトクロム C の流出は、ある時点で固定処理した細胞を、シトクロム C 抗体で免疫細胞染色する方法でも検出できます。
Staurosporine で処理した HeLa 細胞を Apotrack™ Cytochrome C Apoptosis ICC Antibody Cocktail (ab110417) で免疫細胞染色を行なった。緑はシトクロム C の局在を、赤は ATP synthase subunit alpha の局在をそれぞれ示し、白矢印はシトクロム C のミトコンドリアからの流出を示す。