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エピジェネティクスおよび RNA バイオロジーの分野を中心に近年、RNA の役割と機能に対する関心が高まっており、転写や翻訳以外の RNA の機能について研究が進んでいます。そして mRNA やノンコーディング RNA の機能の多くが RNA―タンパク質相互作用によって調節されているという知見が増えています。RNA 免疫沈降(RNA immunoprecipitation; RIP)はこのような相互作用を調べるための有用なツールとなります。
RIP は抗体を利用した手法です。ターゲットとした RNA 結合タンパク質(RNA binding protein; RBP)は、それに対する抗体によって、結合した RNA(mRNA、ノンコーディング RNA、ウイルス RNA など)と共に免疫沈降されます。そして得られた沈降物は qPCR、マイクロアレイ、シークエンシングなどによって分析されます。
以下のプロトコールは、Khalila et al.(2009)、Hendrickson et al.(2009)、Hendrickson et al.(2008)、Rinn et al.(2007)、各論文を参考にして作成されました。
1. 細胞をホルムアルデヒドで処理して RNA と RBP を架橋(cross-linking)した後、細胞を回収する。
2. 核を単離し、ライゼートを作製する。
3. クロマチンをせん断(shearing)する。
4. RBP に対する抗体を用い、架橋された RNA と RBP の複合体を免疫沈降する。
5. 洗浄する。
6. 沈降物から RNA を精製する。
7. RNA を cDNA に逆転写し、qPCR などで解析する。
1.1 コンフルエントになるまで細胞を増殖させ、実験に必要な処理を細胞に行う。
1.2 架橋処理は細胞の種類や数などによって最適化を行う。最適化に当たっては、ChIP プロトコールを参照のこと。
1.3 トリプシン処理によって細胞を回収して PBS で懸濁し(例:107 cells / 2 mL PBS)、Nuclear isolation buffer(調製法は下記)2 mL および水 6 mL を加えて再懸濁する。次いで、頻繁に混和しつつ 20 分間氷上に置く。
実験においては、一つあるいはそれ以上のネガティブ・コントロールを置くことが必要です。例えば免疫沈降反応において抗体を加えない、ターゲット RBP のノックアウト細胞をサンプルとする、などです。なおネガティブ・コントロールとして、ノックアウト細胞の代わりにノックダウン細胞を使用することは、お勧めしません。
2.1 2,500 xg で 15 分間遠心を行い、沈殿物(核ペレット)を回収する。
2.2 核ペレットを RIP buffer(調製法は下記)1 mL に再懸濁する。
RNA の分解を避けるため、実験を通して RNase フリーのチップ、チューブ、試薬ボトルなどを使用してください。またバッファー類などの試薬も、RNase フリー / DNase フリーの超純水などを使用して調製してください。
3.1 再懸濁した核ペレットを 500 μL ずつ二つに分ける(一方はネガティブ・コントロール用)。
3.2 15-20 ストロークのダウンス・ホモジナイザーにより、クロマチンを機械的にせん断する。
サンプルの種類によって、せん断条件の最適化が必要とすることがあります。
3.3 13,000 rpm で 10 分間遠心を行い、核膜などの不溶物を除いて上清を得る。
リファレンスとなる RNA を単離するため、保存する場合は凍結して液体窒素中とします。
4.1 上清(6-10 mg に相当)に、ターゲット RBP に対する抗体 2-10 μg 相当量を加え、緩やかに回転させながら 4 ℃ で2時間(または一晩)インキュベーションを行う。
4.2 次いで Protein A ビーズまたは Protein G ビーズを懸濁した液 40 μL を加え、穏やかに回転させながら 4 ℃ で 1 時間インキュベーションを行う。
抗体の量および反応条件は例です。これらの最適な条件はターゲット RBP の種類および用いる抗体の特性によって大きく異なりますので、個別に条件検討を行う必要があります。
5.1 2,500 rpm で 30 秒遠心して上清を除き、沈殿したビーズに RIP buffer 500 μL を加えて懸濁させる。この洗浄操作を 3 回繰り返す。
この洗浄操作は重要です。ビーズの性能によっては最適化が必要な場合があります。
5.2 RIP buffer での 3 回の洗浄後、PBS で 1 回洗浄する
2 回目の洗浄後に、ウエスタン・ブロッティング用のサンプルとして容量の 5 % 程度を凍結保存しておいてください。
6.1. TRIzol RNA extraction reagent を用い、メーカーの指示に従って RNA を精製する。アブカムの RNA isolation protocol も参照のこと。
6.2 RNase フリーの水 20 μL で RNA を溶出する。
RNA 沈殿物に、DEPC 処理した TE バッファーまたは水を 15〜25 μL 加えます。溶出された RNA は -80 ℃ で保存します。
6.3 単離されたタンパク質は必要に応じて、ウエスタン・ブロッティングによって解析する。
架橋処理(1.2)を行った場合、脱架橋(Reversal of cross-links)を行ってください。方法は ChIP プロトコールの Elution and reversal of cross-links の項をご参照ください。
7.1 精製された RNA を鋳型として逆転写反応を行い cDNA を得る。
7.2 ターゲットが明らかである場合、qPCR による分析を行うことができる。ターゲットが明らかでない場合には、cDNA ライブラリーの作成、マイクロアレイ、シークエンシングなどによる分析を行う。
Hendrickson DG, Hogan DJ, McCullough HL, Myers JW, Herschlag D, Ferrell JE, and Brown PO (2009). Concordant Regulation of Translation and mRNA Abundance for Hundreds of Targets of a Human microRNA. PLoS Biology 7 (11), 2643.
Hendrickson DG, Hogan DJ, Herschlag D, Ferrell JE, and Brown PO (2008). Systematic Identification of mRNAs Recruited to Argonaute 2 by Specific microRNAs and Corresponding Changes in Transcript Abundance. PLoS One3 (5), 2126.
Rinn JL, Kertesz M, Wang JK, Squazzo SL, Xu X, Brugmann SA, Goodnough LH, Helms JA, Farnham PJ, Segal E, and Chang HY (2007). Functional demarcation of active and silent chromatin domains in human HOX loci by noncoding RNAs. Cell 129, 1311–1323.