アブカムでは最適な動作のために Google Chrome など最新ブラウザでの閲覧を推奨します。
Take a look at our BETA site and see what we’ve done so far.
Search and browse selected products
Purchase these through your usual distributor
VEGF(Vascular endothelial growth factor; 血管内皮細胞増殖因子)はシスチン・ノット増殖因子スーパーファミリーの一員であり、胎生期における de novo な血管形成(Vasculogenesis; 脈管形成)や、既存の血管からの分岐伸長による新たな血管の形成(Angiogenesis; 血管新生)において、重要な役割を担う細胞増殖因子です。
VEGF ファミリー
この増殖因子は、VEGF-A、VEGF-B などからなる VEGF ファミリー・タンパク質を構成しています。これらファミリー・タンパク質にはそれぞれさらに、RNA スプライシングの違いによる複数のアイソフォーム(サブタイプ)が存在します。例えば VEGF–A にはアミノ酸残基数が 121、145、148、165、183、189、206の 7 種が存在し、VEGF–Bにはアミノ酸残基数が 167 と 186 の 2 種が存在します。それぞれのアイソフォームは、含まれるエクソンの違いにより、可溶性や、レセプターへの結合性などが異なり、作用も異なってきます。VEGF ファミリーのうち最もよく知られている VEGF–A には血管内皮細胞の増殖、血管透過性の亢進、管膣形成の促進、内皮細胞からの活性物質の産生誘導といった多くの作用があり、VEGF–E には腫瘍組織の血管形成への特異的な作用があると考えられています。
VEGF レセプター
VEGF が結合する VEGF レセプターには VEGF Receptor 1(VEGFR-1)、VEGF Receptor 2(VEGFR-2)、VEGF Receptor 3(VEGFR-3)の 3 種類が存在し、それぞれに特定の VEGF アイソフォームが結合します。VEGFR-1 に結合するアイソフォームは VEGF–A と VEGF–B、VEGFR-2 に結合するアイソフォームは VEGF–A、VEGF–C、VEGF–D、および VEGF–E、そして造血細胞にのみ発現している VEGFR-3 に結合するアイソフォームは VEGF-C と VEGF–D です。
VEGF シグナル・パスウェイ
VEGF は筋細胞や神経細胞などさまざまな細胞に対しての生理作用が報告されていますが、その中で最も顕著なのが血管内皮細胞に対する作用です。その作用には、遺伝子発現の誘導、血管透過性亢進の制御、細胞増殖の促進、細胞走化性の誘導、細胞の維持などがあり、複雑な血管新生のプロセスにおいて、重要な役割を担っています。
VEGF レセプターはチロシンキナーゼ活性を有し、VEGF が結合した VEGF レセプター は細胞質内のターゲット・タンパク質をリン酸化することによって細胞内にシグナルを伝達し、下流にあるさまざまなパスウェイを活性化していきます。活性化されるパスウェイには、細胞増殖や遺伝子発現を制御する Ras / MAPK パスウェイ、細胞骨格の再構成を制御する FAK / paxillin パスウェイ、細胞生存シグナル伝達の主要経路である PI3K / AKT パスウェイ、新しい毛細血管の形成に関わる RhoA / ROCK パスウェイ、血管透過性を制御する PLCγ パスウェイなどがあります。
VEGF と血管新生
胚発生期には VEGF が高発現し、その他の増殖因子と協調して脈管形成の調節を行っています。マウスを用いて VEGF パスウェイを阻害する実験を行ったところ、循環器系に重大な障害が起こり、胎生致死を誘発したとの報告があります。
生後 VEGF の発現量は大幅に低下します。しかしながら外傷や骨折の治癒など脈管形成が必要となった組織においては局所的に、VEGF の発現量の上昇が認められます。VEGF の発現量の上昇は癌、関節リウマチ、加齢黄斑変性症などの血管新生を伴う疾患においても、認められることから、VEGF がこれら疾患の進行に関与していることが予想されます。
VEGF の研究
VEGF を標的とする中和抗体や低分子阻害物質などが、広く臨床の場で用いられるようになっています。しかしながら VEGF が血管新生のスイッチを活性化してから血管の伸長や新たな血管枝の形成が引き起こされるまでには、高度に制御された、予想された以上に複雑なプロセスが存在すると考えられています。例えば活性化された複数のプロテアーゼによる血管周囲の基底膜の分解や、内皮細胞の増殖によるルーメンや基底膜の生成などです。こうしたプロセスを解明するためには更なる研究が必要であり、その研究が上記疾患の新たな治療法や薬剤の開発につながることが期待されます。