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GAPDH はエネルギー産生にきわめて重要な、解糖系においてキーとなる酵素の一つです。
GAPDH(Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase; グリセルアルデヒド -3- リン酸脱水素酵素)の具体的な働きは、グリセルアルデヒド 3- リン酸(Glyceraldehyde-3-phosphate; G3P)にもう 1 つのリン酸基を与え、D-1,3- ビスホスホグリセリン酸(1,3-BPG)に変換することです。この反応に伴い、電子伝達体である NAD+ から NADH(Nicotinamide adenine dinucleotide)が生じます。これは真核生物における解糖系の 6 番目のステップに当たります。解糖系はここまでのステップではエネルギーを消費するのみでしたが、このステップで初めて、エネルギーを産生したことになります。
このステップの反応は、NAD+ の存在下でのアルデヒドからカルボン酸への酸化と、リン酸基の付加の二段階に分けられます。後者は吸エネルギー反応であり、熱力学的に不利ですが、発エネルギー反応である前者と同時に行なうことにより、有利に進みます1,2。
GAPDH は真核生物の細胞で普遍的に発現しており、その遺伝子は『ハウスキーピング遺伝子』とされているように、多くの研究者になじみの深いタンパク質です。解糖系酵素としても古くから研究されており、その機能や局在はほとんど明らかになっていると考えられてきました。しかしながら近年、解糖系酵素としての機能以外の働きも担っていることが明らかになってきました3。その働きとはストレスへの耐性の獲得、細胞死の誘導、膜融合および細胞骨格への作用、DNA 修復、RNA の排出などで、これらは翻訳後修飾と細胞内局在によって調節されていると考えられています4。
GAPDH は細胞ストレスのセンサーとして働いており、そのセンサーはストレスによる損傷からの回復に働いたり、逆に細胞死を誘導したりします3,4。GAPDH は、通常の生理条件下では糖代謝を嫌気性経路からペントースリン酸経路へと誘導しますが、酸化ストレスの条件下では可逆的に不活化され、糖代謝はより安定した方法へと切り替えられます5。その一方で GAPDH はストレス下でミトコンドリアに移行し、シトクロム C の漏出を促進することでアポトーシスを誘導します6。
このような、これまで知られていなかった GAPDH の働き、特に細胞死への誘導は、このタンパク質の高いレベルでの発現が、さまざまな疾患に関係している可能性を示唆します3。特にパーキンソン病7やアルツハイマー病8などの神経変性疾患における関与についての証拠が多く出されています。例えば GAPDH 量の増加がこのような患者の脳にしばしば認められることです。これは GAPDH が変異ハンチンチン(Mutant huntingtin)・タンパク質や ベータ・アミロイド(β-Amyloid)・ペプチドに直接作用することを示唆しています9,10。