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細胞内のタンパク質や細胞内小器官(オルガネラ)は、不要となったら、あるいは必要に応じ、オートファジー(autophagy)によって分解され、その成分は細胞内で再利用されます。オートファジーの活動は通常状態の細胞では低レベルですが、細胞が飢餓や低酸素といった環境にさらされると、上方制御を受け活発化します。
オートファジーは厳密に制御されたパスウェイであり、ストレスを受けた場合でもその生命を維持できるように細胞に組み込まれた、重要かつ巧妙なシステムです(Mizushima et al., 2010)。
オートファジーの種類
哺乳類の細胞ではこれまでに 3 種類のオートファジーが確認されています(Glick et al., 2010)。
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マクロオートファジー(Macroautophagy)
メインのオートファジーとされています。細胞質成分やオルガネラを包み込んだオートファゴソーム(autophagosome)と呼ばれる小胞が、リソソーム(lysosome)と融合してオートリソソーム(autolysosome)を形成し、包み込んだ内容物を分解します。
マイクロオートファジー(Microautophagy)
リソソーム膜が陥入して直接細胞質成分を取り込み、その内部で分解します。オルガネラ量の調節、膜の恒常性維持、窒素不足の状態での細胞の生存に重要であると考えられています(Li et al., 2012)。
シャペロン介在性オートファジー(CMA)
細胞質内のタンパク質とシャペロン・タンパク質との複合体をリソソーム膜上の受容体 LAMP-2A(lysosomal-associated membrane protein 2A)が認識してリソソーム内に直接取り込み、高次構造を解いて分解します。
オートファジーのプロセスには様々な分子が関与し、次のように進んでいきます。
Figure 1: オートファジーのプロセス。左から(a)通常状態の細胞(b)オートファジーの誘導と隔離膜の形成(c)オートファゴソームの形成(d)リソソームとの融合
オートファジーの誘導と隔離膜の形成
さまざまな刺激に応答してオートファジーが誘導されると、まず細胞内に隔離膜(phagophore)と呼ばれる、平面状の膜が形成されます。その形成には、2 種類の複合体、クラスⅢ PI3 キナーゼ複合体(Vps34、Atg6/Beclin1、Atg14、Vps15 など)とセリン/スレオニン・キナーゼ複合体(Atg1/ULK1 複合体)が関与しています。
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隔離膜の伸長とオートファゴソームの形成
隔離膜が伸長し、二重膜で囲われた小胞、オートファゴソームが形成されます。この形成には E1 様酵素 Atg7 により媒介される 2 種類のユビキチン様修飾パスウェイ、Atg5-Atg12-Atg16L と LC3B(Atg8)が関与します。この段階ではまだタンパク質の分解は起こりません。
LC3B は Atg4 により修飾を受けて LC3B-I となり、その後 Atg7 および Atg3 を介し、最終的にホスファチジルエタノールアミン(PE)が結合して LC3B-II となります。LC3B-II はオートファゴソームの内膜表面と外膜表面の両面に発現します。LC3 はオートファジーの進行につれて発現量が増えるので、研究の際オートファジーのマーカーとしても用いられます。
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オートリソソームの形成、タンパク質の分解とリサイクル
オートファゴソームが完全に形成されると、Atg4 の働きにより外膜上の LC3B-II から PE が解離します。その後オートファゴソームとリソソームの二重膜が融合してオートリソソームが形成されます。この形成には哺乳類では LAMP-2 や Rab7 が関与すると考えられています。
リソソームに含まれていた酸性加水分解酵素により、オートリソソーム内のタンパク質が分解されます。アミノ酸などの分解産物は細胞質へ戻され、新たなタンパク質合成や細胞機能維持の材料としてリサイクルされます。
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オートファジーは癌、神経変性疾患、心血管疾患、肺疾患、感染症など、さまざまな疾患に関わっているとされています。さらに、老化や運動機能にもかかわっていると考えられています(Choi et al., 2013)。
癌
オートファジーの主要な因子の一つである Beclin1 が腫瘍抑制的な働きを有するとした報告(Liang et al., 1999)以後研究が進み、p53、Beclin2、PTEN といった腫瘍抑制タンパク質がオートファジーの調節に関連していることが明らかになっています。
腫瘍形成にとってオートファジーは、相反する二つの役割を担っていると考えられます。正常な細胞では、活性酸素、オルガネラの異常、DNA 損傷といった腫瘍化につながるような悪影響から細胞を守るように働きます。しかしながらひとたび腫瘍化してしまった細胞においては、細胞の成長や低栄養状態の克服に利用されます。Yang らは、オートファジーは血管新生を進めて癌細胞に栄養を供給し、炎症反応を制御して腫瘍微小環境を調節していると報告しています(Yang et al., 2015)。
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神経変性疾患
アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患ではしばしば、脳神経組織に異常タンパク質や毒性タンパク質の凝集、蓄積が観察されます(Ravikumar et al., 2002; Ravikumar et al, 2004)。神経細胞でオートファジーに関連する遺伝子の発現を抑制すると、神経変性疾患が引き起こされる(Komatsu et al., 2006 ; Hara et al., 2006)ことから、オートファジーは異常タンパク質やその凝集の除去を行っていると考えられます。
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心血管疾患
心筋細胞においてオートファジーは、細胞内の機能維持や修復、虚血などのストレス応答において、さまざまな役割を担っています。したがってさまざまな心血管疾患がオートファジーの不全と関連していると考えられています(Cuervo, 2004)。
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感染症
バクテリアやウイルスなどの病原体からの免疫防御にも、オートファジーは大きな役割を担っています。特に病原体の捕捉、分解、抗原提示といった一連の免疫反応が重要です(Levine et al., 2011)。
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主なオートファジーマーカー:ATG9、ATG14、ATG18、Beclin1、DRAM1
その他のマーカーはこちら
オートファジー検出キット(ab139484)
オートファジー/細胞毒性 染色キット(ab133075)
LC3 や Beclin1 など免疫組織化学(IHC)での検出のポイント