アクチン:細胞の構造および運動におけるメイン・プレーヤー

すべての真核細胞に存在し、極めて重要で、かつ多量に発現しているタンパク質アクチンは、細胞骨格の主要な構成成分であり、また細胞の運動において重要な働きを担っています。

ヒトのアクチンには、α、β、γ の 3 種類のアイソフォームが存在します。ベータ・アクチン(β-Actin)とガンマ・アクチン(γ-Actin)がほとんどすべての細胞で発現しているのに対し、アルファ・アクチン(α-Actin)は主に平滑筋、骨格筋、心筋などの筋細胞で発現しています。これらアイソフォームの相同性は極めて高く、例えば β-Actin と γ-Actin のアミノ酸配列の相違はわずか 4 箇所です1

アクチン分子は重合して連なり、繊維状のアクチン・フィラメント(F-Actin)となって細胞の骨格を形成しています。またそれと同時にアクチン・フィラメントは、遊走、接着、移動といった細胞運動において中心的な役割を担います。さらに、ミトコンドリアやゴルジ体小胞、ペルオキシソームなどの細胞小器官の細胞内での移動を調節し、細胞間結合や細胞極性を制御します1。このようなアクチンの機能は、数多くの細胞小器官や、多種類の分子との相互作用を介し、調節されています2

細胞内でのアクチンの挙動

細胞質内には分子量約 42 kDa の単量体アクチンの多くが、ATP が結合した状態で存在しています。これら ATP 結合型アクチンが可逆的に重合し、アクチン・フィラメントを形成します。ATP 結合型アクチンは細胞質内において重合するのに十分な濃度で存在しており、その重合の調節・制御は、Thymosin β4、Profilin 等のアクチン結合タンパク質(Actin binding protein)や、重合の際の「核」となるアクチン三量体の形成を促進する Formin、ARP 2/3 complex 等の核化因子(Nucleation factor)など、多くの種類の分子を介しています2,4

重合によるアクチン・フィラメントの形成は可逆反応であり、フィラメントの末端でアクチン単量体が付加(重合)する一方、反対側の末端からアクチンが遊離(脱重合)していきます。前述の通り付加されるアクチンは ATP 結合型ですが、アクチン上の ATP はフィラメント内で ADP に加水分解されます。この ATP から ADP への変化が脱重合に関与しているとされていますが、その一方で、この変化は脱重合に必須なものではないという報告もあります3。この重合と脱重合の繰り返しが、細胞運動につながります。重合と同様、脱重合もまた、Cofilin など多数の分子によって調節されています。


核内におけるアクチンの機能

細胞質内に多量に存在するアクチンですが、核内での存在量は小さく、また機能は不明でした。ところが近年、アクチンの核内における重要な働きが発見されました。それはクロマチンの再構築と転写調節への関与です5

例えば核内のアクチンおよび各種アクチン関連タンパク質(Actin related protein; Arp)は、SWI-SNF、SWR1、INO80 等のクロマチン・リモデリング複合体や、NuA4 HAT 等のヒストン修飾酵素複合体の、複合体構成要素となり、クロマチンの構造変換に関与しているとの報告があります6。また RNA ポリメラーゼI、II、IIIと共に、RNA 転写開始に関与しているとの報告もあります7


ローディング・コントロールとしてのアクチン

前述の通りアクチンは、すべての真核細胞に存在しているため、発現タンパク質のポジティブ・コントロールとして広く用いられてきました。例えばウェスタン・ブロッティングにおけるローディング・コントロールとして、などです。特に β-Actin は細胞の種類を問わず広く分布し、また発現量(存在量)も多いため、最も広く用いられています。しかしながら β-Actin の発現量は、組織の種類や細胞分化の程度によって異なることが明らかになっています。異なる組織および細胞を比較する実験において β-Actin をコントロールとして使用する場合には、その点を考慮する必要があります8,9

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References

1. Alberts B, Johnson A, Lewis J, et al. (2002). Molecular Biology of the Cell. 4th edition.

2. Budnar S, Yap AS (2013). A mechanobiological perspective on cadherins and the actin-myosin cytoskeleton. F1000Prime Rep. Sep 2; 5:35.

3. Lodish H, Berk A, Zipursky SL et al (2000). Molecular Cell Biology. 4th edition. New York: W. H. Freeman.

4. Mullins RD, Hansen SD (2013). In vitro studies of actin filament and network dynamics. Curr Opin Cell Biol. Feb;25(1):6-13. New York: Garland Science.

5. de Lanerolle P (2012). Nuclear actin and myosins at a glance. J Cell Sci. November 1; 125(21): 4945–4949.

6. Szerlong H, Hinata K, Viswanathan R, Erdjument-Bromage H, Tempst P, Cairns BR (2008).The HSA domain binds nuclear actin-related proteins to regulate chromatin remodeling ATPases. Nat Struct Mol Biol.15(5):469-76

7. Percipalle P (2013). Co-transcriptional nuclear actin dynamics. Nucleus. Jan-Feb;4(1):43-52.

8. Dittmer A, Dittmer J (2006). Beta-actin is not a reliable loading control in Western blot analysis. Electrophoresis. Jul; 27(14):2844-5.

9. Eaton SL, Roche SL, Llavero Hurtado M, Oldknow KJ, Farquharson C, Gillingwater TH, Wishart TM (2013). Total protein analysis as a reliable loading control for quantitative fluorescent Western blotting. PLoS One. Aug 30;8(8):e72457.

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