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3T3-L1 細胞から Adipocyte-like 細胞への分化誘導

3T3-L1 細胞から分化誘導された Adipocyte-like 細胞がその特性を有していることを、さまざまな方法で検証します。

注目キーワード : IBMXインスリンDEXレプチンオイルレッドO染色グルコース取り込み

マウス胎児線維芽細胞株 3T3-L1 は、脂肪細胞様(Adipocyte-like)細胞へと化学的に分化誘導できることが知られています。これは簡便かつ低コストで行うことができる、優れた方法です。ここでは分化誘導された Adipocyte-like 細胞が、細胞内への脂肪蓄積、レプチンの産生、マーカーの発現など、脂肪細胞の特性を有していることを評価するための方法をご紹介します。

3T3-L1 細胞から Adipocyte-like 細胞への分化

3T3-L1 細胞の培養液に 3 種類の薬剤、IBMX(isobutylmethylxanthine イソブチルメチルキサンチン ab120840)、インスリン(ab123768)、DEX(Dexamethasone デキサメタゾン ab120743)を添加すると、Adipocyte-like 細胞へと分化します。

プロトコールの詳細はこちらをご覧ください。

結果

3T3-L1 細胞と、分化誘導後の Adipocyte-like 細胞を比較しました。

オイルレッド O 染色(Oil Red O staining)

脂肪細胞は脂肪を細胞内部に蓄えています。オイルレッド O を用いて染色すると、Adipocyte-like 細胞には赤く染まった脂肪滴が、認められますが、3T3-L1 細胞には認められませんでした(Figure 1)。

Figure1: 3T3-L1 細胞(左)と分化誘導された Adipocyte-like 細胞(右)を、Oil Red O staining kit (ab150678) を用いて染色した。

細胞ライゼート中のレプチンの測定

レプチンは肥満や食欲の制御に関わるホルモンで、主に脂肪細胞から分泌されます。3T3-L1 細胞と分化誘導された Adipocyte-like 細胞のライゼート中のレプチン濃度を測定したところ、Adipocyte-like 細胞は 3T3-L1 細胞に比べて、レプチン発現量が顕著に増加していました(Figure 2)。

Figure2: 3T3-L1 細胞(右)および分化誘導された Adipocyte-like 細胞(左)からそれぞれライゼートを調製し、Leptin mouse ELISA kit (ab100718) を用いてレプチン濃度を測定した。

脂肪細胞マーカーの免疫蛍光染色による検出

脂肪細胞マーカーとして知られるタンパク質を、免疫蛍光染色にて検出しました。

アディポネクチン(Adiponectin)はインスリン感受性を亢進させ、インスリン感受性の組織においてグルコース代謝や脂質代謝の調整に重要な役割を担うホルモンで(Yamauchi et al., 2001)、脂肪細胞から分泌されます(Scherer et al., 1995)。アディポネクチン抗体を用いて蛍光免疫染色を行ったところ、3T3-L1 細胞では認められないアディポネクチンが、分化誘導された Adipocyte-like 細胞では認められました。

Figure3: 3T3-L1 細胞(左)と、3T3-L1 細胞より分化誘導された Adipocyte-like 細胞(右)を、アディポネクチン抗体(ab22554 2.5 μl/ml)/ Alexa Fluor® 594 標識二次抗体(ab150120 緑)および β チューブリン抗体(ab6046 赤)を用いて免疫蛍光染色を行い、共焦点顕微鏡で観察した。

FABP4 は細胞内の脂質代謝や糖代謝に深く関与する脂肪酸結合タンパク質で、脂肪細胞に発現しています(Baxa et al., 1989)。FABP4 抗体(ab92501)を用いて免疫蛍光染色を行ったところ、3T3-L1 細胞では認められなかった FABP4 が、分化誘導された Adipocyte-like 細胞では認められました。

Figure4: 3T3-L1 細胞(左)と、分化誘導された Adipocyte-like 細胞(右)を、FABP4抗体(ウサギ・モノクローナル抗体 RabMAb® ab92501 2.5 μl/ml)/ Alexa Fluor® 594 標識二次抗体(ab150088 緑)および α チューブリン抗体(ab7291 赤)を用いて免疫蛍光染色を行い、共焦点顕微鏡で観察した。

グルコース取り込み能(Glucose uptake)の測定

脂肪細胞の特性のひとつとして、インスリン刺激によるグルコースの取り込みがあります(Cushman & Wardzala, 1980)。その取り込み能を測定しました。この測定系は、グルコースと構造的に類似する 2-DG(2-deoxyglucose)を用います。2-DG はグルコースと同様、グルコース・トランスポーターにより細胞内へ取り込まれ、代謝されて 2-DG6P(2-DG 6-phosphate)となります。2-DG6P はそれ以上代謝されることなく細胞内に蓄積するため、細胞内の 2-DG6P 量はグルコース・トランスポーターの機能、すなわちグルコースの取込み能を反映すると考えられます。Adipocyte-like 細胞をインスリン刺激し、刺激前後での細胞内の 2-DG6P 量を測定し、比較しました。その量はインスリン刺激後の細胞では刺激前の 5 倍以上となり、Adipocyte-like 細胞はグルコースの取り込み能を有していることが分かりました。

Figure5: インスリン刺激を行った Adipocyte-like 細胞(左 2-DG+I)とインスリン刺激を行わない Adipocyte-like 細胞(右 Control)の 2-DG6P 量を glucose uptake assay kit (ab136955) を用いて測定した。.

結論

3T3-L1 細胞の Adipocyte-like 細胞への分化誘導は、細胞内への脂肪蓄積、レプチンの産生、アディポネクチンや FABP4 などの脂肪細胞マーカーの発現、インスリン刺激によるグルコース取り込み能の獲得などによって確認できました。

アブカムはこれら実験に使用できる検出できる抗体、キット、分化誘導因子となる生理活性物質などの製品を、幅広くラインアップしています。

References

  • Baxa CA, Sha RS, Buelt MK, Smith AJ, Matarese V, Chinander LL, Boundy KL, Bernlohr DA (1989). Human adipocyte lipid-binding protein: purification of the protein and cloning of its complementary DNA. Biochemistry 28, 8683–8690.
  • Cushman SW, Wardzala LJ (1980). Potential mechanism of insulin action on glucose transport in the isolated rat adipose cell. J. Biol. Chem. 255, 4758–4762
  • Scherer PE, Williams S, Fogliano M, Baldini G, Lodish H (1995). A novel serum protein similar to C1q produced exclusively in adipocytes. J Biol. Chem. 270, 26745–26749
  • Stolic M, Russell A, Hutley L, Fielding G, Hay J, MacDonald G, Whitehead J, Prins J (2002). Glucose uptake and insulin action in human adipose tissue—influence of BMI, anatomical depot and body fat distribution. Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 26, 17–23
  • Yamauchi T, Kamon J, Waki H, Terauchi Y, Kubota N, Hara K, Mori Y, Ide T, Murakami K, Tsuboyama-Kasaoka N, Ezaki O, Akanuma Y, Gavrilova O, Vinson C, Reitman ML, Kagechika H, Shudo K, Yoda M, Nakano Y, Tobe K, Nagai R, Kimura S, Tomita M, Froguel P, Kadowaki T (2001). The fat-derived hormone adiponectin reverses insulin resistance associated with both lipoatrophy and obesity. Nat. Med. 7, 941–946.
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