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抗体ガイド 5. 抗体製品のフォーマットと精製方法

市販されている抗体製品のフォーマットの違い、精製方法の違いを解説します。

抗体製品のフォーマットには、抗血清、IgG 画分、アフィニティ精製品などがありますが、これらの違いは精製方法の違いであり、アブカムのデータシートでは「精製度(Purity)」の項に記載されています。

ポリクローナル抗体の出発原料は血清で、モノクローナル抗体の出発原料は培養上清であり、抗体製品の製造において最初に行う作業はこれら出発原料を遠心し、細胞断片などの不溶物を除くことです。不要物を除いたものをそのまま製品にしたものもあります。データシートに Whole antiserum(抗血清)、Tissue culture supernatant(培養上清)などと記載されている製品がそれです。一方、クロマトグラフィーなどの精製ステップを経て精製抗体として製品としたものもあります。データシートに Protein A purified(Protein A 精製品)、IgG fraction(IgG 画分)、Immunogen affinity purified(アフィニティ精製品)などと記載されている製品です。


抗血清(Antiserum)

抗原を免疫した動物の血液から得た血清をそのまま製品としたものです。IgG や IgM などの抗体(イムノグロブリン)の他、アルブミンやトランスフェリンなどの血清タンパク質を含みます。また、ターゲット抗原を認識する抗体だけでなく、それ以外の物質と反応する抗体(非特異抗体と呼びます)も含みます。非特異抗体は各種アプリケーションにおいてバックグラウンドの上昇などの原因となる可能性があります。抗体濃度がデータシートに記載されていない製品がほとんどで、記載されているとしても特異的な抗体の濃度ではなく、非特異抗体も含んだ全抗体濃度となります。


培養上清(Tissue culture supernatant)

ハイブリドーマや抗体遺伝子(イムノグロブリン遺伝子)を導入した細胞など、モノクローナル抗体を産生する細胞を培養した培養上清を、そのまま製品としたものです。含まれている抗体はモノクローナルであり、非特異的な抗体は含まれていません。ただしその細胞が産生した分泌タンパク質など、抗体以外のタンパク質も含まれています。


未精製抗体の濃度

抗血清や培養上清などの未精製品の多くは、抗体濃度がデータシートに記載されていません。記載されていない場合の抗体濃度と各種実験(アプリケーション)における使用濃度または使用希釈倍率は、下記の表をご参照ください。なお未精製品の抗体濃度は、多くの場合製造ロットごとに変動します。実験における使用濃度および使用希釈倍率は、ロットが変わるたびに再設定することをお勧めします。


抗血清培養上精腹水精製抗体
目安の抗体濃度1–10 mg/ml1–3 mg/ml5–10 mg/ml
WB/Dot B1/5001/1001/10001 µg/ml
IHC/ICC1/100–1/501/10–1/11/1005 µg/ml
ELISA1/5001/10001/100000.1 µg/ml
FlowCyt1/5001/1001/10001 µg/ml
IP1/100–1/50
1/1001–10 µg/ml



精製抗体

未精製抗体である抗血清や培養上清からの精製品の製造は、下記のような精製方法で行います。なお出発原料の液量が多い場合には、硫酸アンモニウムなどで塩析して液量を減らした上で、精製のステップに進める場合もあります。

Protein A/G 精製

抗体(イムノグロブリン)タンパク質を特異的に精製する方法で、イムノグロブリンと特異的に結合するバクテリア由来タンパク質である Protein A や Protein G などを固定化したカラムを使用したクロマトグラフィーです。この精製法では抗体以外のタンパク質が除かれます。培養上清から得られたモノクローナル抗体の精製品には特異的な抗体しか含まれていませんが、抗血清から得られたポリクローナル抗体の精製品には非特異抗体も含まれています。

なお Protein A と Protein G が結合する抗体タンパク質の特異性と親和性は異なるため、精製する抗体のホスト動物種とアイソタイプによって使い分けられます。またどちらも IgM とは結合しにくいため、IgM の精製は Protein L など別のタンパク質を固定化したカラムや、イオン交換、ゲルろ過などのフロマトグラフィーで行います。

アフィニティ精製

ターゲット分子と特異的かつ可逆的に結合する分子(リガンド)の反応を利用して、ターゲット分子あるいはその複合体を分離・精製する方法です。上記 Protein A/G 精製もアフィニティ精製の一種ですが(ターゲット分子=抗体、リガンド= Protein A/G)、ここでのアフィニティ精製とはリガンドとして抗原を用いた抗原アフィニティ精製を指します。

抗原アフィニティ精製では、抗体以外のタンパク質と非特異抗体は除去され、ターゲット・タンパク質にのみ反応する抗体のみになります。したがってポリクローナル抗体においては、アフィニティ精製抗体は抗血清や Protein A/G 精製抗体よりも低い非特異反応が期待できます。なおモノクローナル抗体においては、出発原料である培養上清に含まれる抗体はターゲット・タンパク質に反応する抗体のみなので、Protein A/G 精製を行えば、抗原アフィニティ精製を行なう必要はありません。


血清吸着処理

ポリクローナル抗体においては、血清吸着処理済(Pre-adsorbed)と記載されている製品がありますが、この処理は、サンプルに含まれる血清タンパク質との交差反応を減少させるために行なったものです。このような製品は主に二次抗体で、ターゲットではない動物種のイムノグロブリンとの交差反応を低く抑えるために行なわれます。



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