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コラーゲン抗体を用いた実験におけるヒント


コラーゲンは、多くの異なるタイプがあること、三重らせん構造をとること、そして会合して線維状となることなどから、実験においてやや扱いにくいタンパク質です。ここではコラーゲン抗体を用いた実験における、役立つヒントとテクニックを紹介します。


コラーゲン(Collagen)は高度にアミノ配列が保存されたタンパク質であり、その配列はグリシン-アミノ酸X-アミノ酸Y の 3 残基ごとの繰り返しを特徴とします。そしてそのポリペプチド鎖が 3 本が集まって三重らせん構造(triple helical structure)をとります1。脊椎動物のコラーゲンは数十種類(タイプ)が知られていますが、それらの立体構造は互いに似ているため、抗体によるタイプの分別は簡単ではありません。

コラーゲン抗体がタイプごとに特異的であるためには、抗体産生のための免疫原には、3 次元構造を保持する非変性コラーゲンか、またはタイプ特異的な配列を有する短いペプチド配列部分を用います。行う実験に応じて抗体を選択し、またその選んだ抗体に応じてプロトコールを適合させる必要があります。

ここでは次のようなトピックについて述べます。

  • コラーゲンの抽出
  • 非変性コラーゲンの 3 次元構造を認識する抗体
  • タイプ特異的な短いペプチド配列を認識する抗体
  • 適切な抗体の選択


図1. 左上:ヒト結腸組織のホルマリン固定パラフィン包埋切片の Collagen I をウサギ・モノクローナル抗体 ab138492 で染色。右上:マウス結腸腫瘍細胞の Collagen I をウサギ・ポリクローナル抗体 ab21286 で蛍光染色(赤)。左下:ヒト関節軟骨細胞の Collagen II をウサギ・ポリクローナル抗体 ab34712 で蛍光染色(赤)。右下:ヒト肝臓組織のパラフィン包埋切片の Collagen VI をウサギ・モノクローナル抗体 ab182744 で染色。


コラーゲン抽出

広く用いられているコラーゲンの抽出法には次の 3 つがあります。

  1. 塩による抽出-塩化ナトリウムを徐々に添加し、塩濃度を高めていって抽出し、生理食塩水可溶性コラーゲンが得られる。抽出例:サンプルに、0.45 M NaCl(pH 7.5)を 24 時間撹拌しながら添加。
  2. 酸による抽出-酢酸などの有機酸を用いて抽出し、酸可溶性コラーゲンが得られる。抽出例:サンプルに 0.5 M 酢酸(pH 2.5)を 24 時間かけて添加。
  3. 酵素による抽出-ペプシン処理で抽出し、ペプシン可溶性コラーゲンが得られる。抽出例:サンプルに 0.1 %(w/v)ペプシン/0.5 M 酢酸(pH 2.5)で 48 時間処理。


図2. 各種抽出法で得られた可溶性コラーゲン画分の濃度2


塩による抽出では、コラーゲンの収量は高くありません(図2)。したがって多くのコラーゲンを得るためには、酸による抽出か、ペプシンなどによる酵素処理で非らせん末端を除去し水溶性を高める方法がよく行われます。しかしながらこれらの方法においても、原材料の架橋具合により可溶性に一貫性がなく、得られるコラーゲン溶液の再現性に乏しいことと、抽出に時間が掛かるため(通常1週間~3週間)、タンパク質分解により収率を下げてしまう問題も残っています。

コラーゲンの三重らせん構造は高温でほどけやすくなります。したがって変性および分解を避けるためには、コラーゲンの抽出は低温下で行う必要があります。


非変性コラーゲンの立体構造を認識する抗体についてのヒント

Collagen I 抗体 ab34710 など、非変性コラーゲンの立体構造エピトープ(three-dimensional(3D)epitope)を認識する抗体を実験に使用する場合には、サンプルとなるコラーゲンが変性されていないか注意しなくてはなりません。例えばホルマリン固定およびパラフィン包埋を行った組織や SDS 処理を行ったライゼート中のコラーゲン・タンパク質は変性しており、このような抗体との反応性は低下します。エピトープ情報は、抗体製品それぞれのデータシートに記載されていますので、抗体を選ぶ際に、あるいは実験を行う前に、必ずご確認ください。


ELISA

コラーゲンはタイプが異なってもアミノ酸配列の相同性が高いため、タイプの違いを判別する場合は、立体構造の違いを識別する抗体を使用した方が確実です。したがって ELISA においては、抗体としては非変性コラーゲンの立体構造を認識する抗体を、標準品としては立体構造を保持した非変性コラーゲンを、それぞれ使用することをお勧めします。

また ELISA プレートに抗原を直接固相化するタイプの ELISA 系においては、固相化したコラーゲンの立体構造が変化する可能性があります。したがって非変性コラーゲンの立体構造を認識する抗体で ELISA 系を構築する際は、サンドイッチ ELISA 系を採用してください。


ウエスタン・ブロッティング

コラーゲンをサンプルとして扱う際には、高い pH(塩基性)、高い濃度、高い温度は避けてください。

コラーゲンは塩基性の条件下、あるいは高濃度で、重合してヒドロゲルを形成しやすくなります(酸性条件下では可溶性であり安定しています)。また一般的なタンパク質よりも熱感受性が高いので、10 ℃ 以下で取り扱ってください。

電気泳動のゲルは次のような条件で作製してください。

  • サンプルに、界面活性剤、還元剤(DTT など)、およびカオトロピック剤(塩酸グアニジン、尿素など)を添加してください。
  • サンプルが Collagen I、II、III の場合には、6 % アクリルアミドゲルを使用してください。
  • サンプルが Collagen IV、V、VI の場合には、10 % アクリルアミドゲルを使用してください。あるいはグラジエント・ゲルを使用してください。

注 1:コントロールはポジティブ、ネガティブ共に、組織などから抽出したネイティブなタンパク質を使用することをお勧めします。

注 2:一次抗体濃度の目安は 0.5-1 μg/ml です。


免疫組織染色-ホルマリン固定パラフィン包埋切片

適切な抗原賦活化条件を探してください。

ホルマリン固定を行うと組織中のコラーゲン分子間で架橋が起こり、三重らせんが整列してフィブリル(fibril)を形成し、次いで線維(fiber)を形成する可能性があり、抗原の賦活化はその架橋の程度に応じて条件設定を行う必要があります。Picro sirius red(ab150681)は線維性コラーゲン(I-V型)上の [gly-X-Y] n ヘリックス構造に特異的に結合するため、コラーゲン架橋の程度を決定するために使用することができます。

抗原賦活化は、コラーゲンの立体構造を破壊しないような穏やかな条件、例えばクエン酸ナトリウム・バッファー(pH 6.0)による処理をお勧めします。酵素処理も広く行われています。

もし抗原賦活化の条件が抗体製品のデータシートに示されている場合は、その条件に従ってください。

抗体希釈倍率の目安は 1:500 - 1:2000 です。


短いペプチド配列を認識する抗体についてのヒント

短いコラーゲン・ペプチドを抗原として樹立されたコラーゲン抗体を使用する場合は、コラーゲンの立体構造の維持を気にする必要はあまりありません。例えば ab138492 など、コラーゲンに対するアブカムのウサギ・モノクローナル抗体 RabMAb® はすべて、ターゲットであるコラーゲンに特異的な配列を有する短いペプチドを抗原として樹立されています。したがって、ウエスタン・ブロッティング、ELISA、免役組織染色など、比較的幅広く使用することができます。


脊椎動物におけるコラーゲンの分布とアブカムの抗体

タイプ

構造

局在

配列特異的抗体

立体構造

特異的抗体

I

線維性

広範囲に存在

ab138492

ab34710

II

線維性

軟骨、硝子体

ab188570

ab34712

III

線維性

皮膚、血管内皮、小腸

ab184993

ab7778

IV

ネットワーク

基底膜

ab214417

ab6586

V

線維性

広範囲に存在


ab7046

VI

ネットワーク

広範囲に存在

ab182744

ab6588

VII

フィブリルの固定

真皮、膀胱

ab223639

ab93350

VIII

ネットワーク

広範囲に存在

ab58776


IX

FACIT

軟骨、角膜、
硝子体


ab134568

X

ネットワーク

軟骨

ab182563

ab58632

XI

線維性

軟骨、椎間板

ab196613


XV

FACIT

基底膜

ab58717


XVII

MACIT

上皮における
半接着斑

ab184996

ab79878

FACIT: Fibril associated collagens with interrupted triple helices
MACIT: Membrane-associated collagens with interrupted triple-helices

表1. 脊椎動物のコラーゲン1



引用文献

1. Shoulders MD, Raines RT. COLLAGEN STRUCTURE AND STABILITY. Annual review of biochemistry. 2009;78:929-958. doi:10.1146/annurev.biochem.77.032207.120833.

2. Mocan E.Tagadiuc O.Nacu V. (2011) Aspects of collagen isolation procedure. Clin. Res. Studies 2, 3–5


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