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抗体ガイド 6. 抗体作製における抗原


抗原(Antigen)の本来の定義は、生体内に侵入してそれに対する特異的な免疫反応(結合する抗体や、認識する免疫細胞の産生)を引き起こす外来物質です。抗体を産生させるためにはその抗原をホスト動物種に投与します。抗原になり得る(抗原性がある)にはある程度の分子量(8 - 10 kDa 以上)が必要で、抗原性がある代表的な物質はタンパク質と多糖です。

抗原になり得る用件としては分子量の他に、立体構造が一定であること、その構造が生体内を構成する物質と似ていないこと、などがあります。脂質や核酸も分子量的には抗原になり得ますが、立体構造が一定でない(回転する、動きやすい、など)ものが多く、一般的に抗原性はあまり強くありません。

構造的には抗原になり得るものの、分子量が小さく免疫反応を起こしにくい物質をハプテン(Hapten)とよび、単糖およびオリゴ糖、アミノ酸および短いペプチド、ステロイド骨格を有する物質、各種低分子生理活性物質などが該当します。このようなハプテンに対する抗体を産生させるためには、ハプテンをタンパク質に結合させて見かけ上の分子量を大きくし、これを抗原としてホスト動物に投与します。結合させるタンパク質をキャリア・タンパク質といい、BSA(Bovine serum albumin; ウシ血清アルブミン)や KLH(Keyhole limpet hemocyanin; スカシガイ由来ヘモシアニン)などが使われます。

このような方法で様々な物質に対する抗体を作製することが可能で、実際に様々な物質に対する研究用抗体が市販されています。しかしながらライフサイエンスの研究において最も広く用いられる抗体はタンパク質に対する抗体ですので、以下は主にタンパク質に対する抗体について述べます。

抗体が認識する(結合する)抗原の部位のことをエピトープ(Epitope)といいます。一つの抗体(イムノグリブリン分子)が認識するエピトープの大きさは、タンパク質においてはアミノ酸残基数個~十数個程度であるとされています。タンパク質はアミノ酸数百から成るものが多いので、抗体はタンパク質のほんの一部を認識していることになります。したがってタンパク質に対する抗体を作製する際にホスト動物に投与する抗原は、全長タンパク質である必要はなく、アミノ酸数十個以上のペプチドであればいいことになります。事実多くの研究用抗体はペプチド(をキャリア・タンパク質に結合させたもの)を抗原として作製されています。

ターゲット・タンパク質とそのエピトープの立体構造などの状態は、アプリケーションに用いるサンプルの状態よってさまざまです。例えばウエスタン・ブロッティングでは、電気泳動前の変性処理によってタンパク質の立体構造はほとんど保たれていません。免疫細胞染色やフローサイトメトリーでは、酸や有機溶媒による固定が穏やかなため立体構造が比較的保たれています。免疫組織染色のパラフィン包埋切片やクロマチン免疫沈降(ChIP)では、立体構造が比較的保たれている一方、アルデヒドによる固定処理でタンパク質が架橋され、抗体がエピトープを認識しにくくなっていることがあります。以上のことからペプチドを抗原として作製された抗体に限らず、市販抗体を選択する場合には、ウェブサイトやデータシートでアプリケーション情報を必ず確認することが必要です。


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