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抗体ガイド 2. 抗体の構造とアイソタイプ


抗体を構成する要素

抗体(Antibody)の本質は糖タンパク質の一種であるイムノグロブリン(Immunoglobulin)で、抗体と対をなす単語である抗原(Antigen)と結合する能力を有します。抗原とは生体外に由来するタンパク質や糖鎖などのいわゆる異物で、抗体は抗原に結合することによって、その異物を排除あるいは不活化します。一種類の抗体が結合する抗原は一種類のみであり、特異的と言われる所以です。

イムノグロブリンの分子は、2 本の重鎖(Heavy chain)と 2 本の軽鎖(Light Chain)がジスルフィド結合(S-S 結合)によって結合し、形作られる Y 字型が基本単位です。Y 字の上端 2 箇所に相当する部分は抗原結合部位(Antigen binding site)と呼ばれ、文字通り抗原に結合します。結合する抗原が異なればこの抗原結合部位のアミノ酸配列および構造は異なります(その違いが抗体の違いです)。イムノグロブリンには IgA、IgD、IgE、IgG、IgM の 5 種類のクラスがありますが、いずれもこの Y 字型の基本単位が 1 個~ 5 個集まって一つの分子を構成しています。

図1. イムノグロブリンの構造(クリックすると拡大します)


重鎖

イムノグロブリンの重鎖は二つの領域、可変領域(Variable region)と定常領域(Constant region)に分けられます。

可変領域は約 110 アミノ酸から成り、軽鎖の可変領域と共に、抗原結合部位を構成します。上記の通りそのアミノ酸配列とタンパク質の構造は抗体によって異なります。

哺乳類では定常領域は α、δ、ε、γ、μ の 5 種類あり、この違い(と構成する Y 字型の基本単位の数)がクラスの違いとなります。言い換えれば同じクラスの抗体であれば定常領域は同じです(IgA=α、IgD=δ、IgE=ε、IgG=γ、IgM=μ)。α、δ、γ の定常領域は約 340 アミノ酸から成る3 つのドメイン、μ と ε の定常領域は約 440 アミノ酸から成る 4 つのドメインから、それぞれ構成されています。


軽鎖

イムノグロブリンの軽鎖は約 210 アミノ酸から成り、重鎖同様二つの領域、可変領域と定常領域に分けられます。

軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と共に、Y 字型の基本単位における抗原結合部位を構成します。軽鎖は定常領域の違いにより λ(Lambda) と κ(Kappa)の 2 種類がありますが、これらはクラスの種類とは関係ありません。なお哺乳類以外の脊椎動物では λ、κ 以外に ι(iota)も認められます。

Fab と Fc

イムノグロブリン分子はその構造上および機能上の違いから、Fab および Fc と呼ばれる二つの部位(フラグメント)に分けられます。Fab の ab は Antigen binding の略で、抗原結合部位を含む部位であり、重鎖および軽鎖の可変領域で構成されています。繰り返しになりますが、そのアミノ酸配列は抗体ごとに異なります。Fc の c は Constant の略で、重鎖および軽鎖の定常領域で構成されているため、クラスが同じであればその配列は同じです。Fc は免疫細胞の表面上の Fc レセプターへの結合や、補体系への関与などによって、免疫系のシグナル伝達に重要な役割を果たしています。

ウエスタン・ブロッティング、免疫組織染色、ELISA などの抗体を用いた検出系において、Fc 部分は抗原抗体反応には直接は関与しません。その一方非特異結合や立体障害の原因になることがあり、しばしば悪い影響を及ぼします。そこでタンパク質分解酵素であるパパインあるいはペプシンで処理し、Fc 部分を除去した抗体を用いる場合があります。フラグメント抗体とも呼ばれるこのような抗体には、酵素処理の条件の違いにより、抗原結合部位を 1 個有する Fab と 2 個有する F(ab)’2 があります。フラグメント抗体は、Fc レセプターと結合しないため免疫系細胞の実験系で安心して使用できる、分子が小さいため細胞内部に侵入しやすいといった利点があります。またその一方、免疫沈降法で使用できない、固相化しにくいといった欠点もあります。


アイソタイプ

前述の通り哺乳類のイムノグロブリンには、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE の 5 つのクラスがあり、またクラスによってはさらにサブクラスに分類されますが、これらはイムノグロブリン重鎖の定常領域の違いと、構成する Y 字型の基本単位の数によって決まります。このように分類されたクラスやサブクラスの抗体を、アイソタイプ(Isotype)と呼びます。各アイソタイプの構造上の特性と機能を、表にまとめました。


アイソタイプ

重鎖

軽鎖

分子量(kDa)

構成

IgA1
IgA2

α1
α2

λ または κ

150–600

単量体、二量体、四量体

IgD

δ

λ または κ

150

単量体

IgE

ε

λ または κ

190

単量体

IgG1
IgG2a
IgG2b
IgG3
IgG4

γ1
γ2
γ3
γ4

λ または κ

150

単量体

IgM

µ

λ または κ

900

五量体



アイソタイプ

機能

IgA

生体内で最も多く産生されるイムノグロブリンで、消化管、呼吸器、尿路系などの粘膜に認められ、病原体の侵入とコロニー形成を防ぐ。母乳に分泌され経口で乳児の体内に入るが、消化への耐性があるため、乳児の体内で働くことができる。

IgD

多くは B 細胞の表面上に存在し、IgM と連携して働くと考えられているが、機能の詳細は不明。

IgE

アレルゲンと結合してマスト細胞からのヒスタミンの放出を引き起こし、花粉症などのアレルギーの原因となる。元々は寄生虫に対する防御を主な目的としたイムノグロブリンと考えられている。

IgG

血清中のイムノグロブリンの大部分を占め、病原体の侵入に対して起こる免疫反応の多くに関与する。IgG3 は胎盤を通過できるなど、サブクラスごとに機能の違いがあるらしいが、詳細は明らかになっていない。

IgM

五量体であり、抗原に対して非常に親和性が高い(結合力が強い)。生体内に侵入した病原体などの抗原に対して十分な IgG が産生される前に、B 細胞の表面上に発現し、最初期の免疫で病原体を除去する。



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