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ヒストン修飾を研究するための方法とツール

ヒストン修飾の状況を調べるために、ヒストン修飾酵素の活性測定や、その活性を阻害する実験が広く行われています。アブカムは、このような研究で成果をあげるお手伝いをいたします。


ヒストン修飾の実験に必要な技術と適切な試薬を選択するためのガイドです。サンプルの準備から修飾の同定・解析まで、全てをカバーします。


サンプルの調製 – 全てはここから

実験を行うに当たっては、当然のことですが、細胞あるいは組織からサンプルを調製する必要があり、この良し悪しが実験結果を左右すると言っても過言ではありません。調製は、行うアプリケーション(実験法)よって方法が異なり、方法ごとにキットが用意されています。下のまとめをご参照ください。


全細胞抽出核抽出

核抽出

(核酸フリー)

ヒストン抽出クロマチン抽出
アプリケーション

酵素活性の測定

タンパク質の検出

酵素活性の測定

タンパク質の検出

タンパク質の検出

ヒストンの検出

クロマチン免疫沈降(ChIP)

DNA-タンパク質結合アッセイ

核酵素アッセイ

サンプルの種類と必要量細胞:
200万~500万個
細胞:
200万~500万個

組織:組織により変動
細胞:
200万~500万個

組織:組織により変動
細胞:
200万~500万個

組織:10 mg

細胞:
10万~1000万個

組織:50~200 mg

アッセイ時間≤ 45 分間≤ 60 分間≤ 60 分間≤ 60 分間≤ 60 分間

抽出キットの
製品番号

ab113475ab113474ab113477ab113476ab117152

​​

全ヒストン修飾レベルの定量

ヒストン翻訳後修飾(PTMs; Post-translational modifications)を調べる最初のステップとして、全ゲノムに亘るヒストン修飾レベルのトータルな変化を見ることがあります。その際には、特定のヒストン・タンパク質やその修飾に対する抗体を用い、ウエスタン・ブロッティング(WB)、免疫組織染色(IHC)、免疫細胞染色(ICC)、ELISA などが行われます。

例えばヒストン WB プロトコールにより、ある疾患の患者と健常人における、全ヒストン修飾を比較することができます。なおこのような実験では、Histone H3 抗体(ab1791)などのように核コントロールとなるような抗体を用いて実験結果を標準化(Normalize)する必要があります。

ヒストン翻訳後修飾は、キット製品を利用して定量を行うことも可能です。キット製品は実験のスケールアップも容易で、サンプル数を増やすことも簡単です。なおキット製品には、比色法と蛍光法があります。


おすすめの製品


ChIP による修飾の検出

ヒストン、修飾ヒストン、転写因子などのタンパク質がゲノム中のどの部分の DNA と相互作用するかを調べるためには、クロマチン免疫沈降(ChIP; Chromatin immunoprecipitation)が広く用いられています。ChIP においてはタンパク質と DNA の複合体を、タンパク質あるいはその修飾部位に対する抗体を用いて沈降させ、分離します。

ヒストン修飾の解析において ChIP は非常に強力なツールとなります。例えば、H3K9me3 はヘテロクロマチンやサテライト・リピート領域でよく見られる修飾であること、H3K27me3 は Gene-rich 領域のプロモーターによく存在すること、H3K4me1 はエンハンサー領域に多い修飾であること、RNA pol II phospho S2S5 はそれぞれ転写の開始と伸長に関与していること、こういったことが全て ChIP で明らかになりました。

ChIP を行う上で最も重要な要素は、「抗体」であるということは広く知られている事実です。アブカムは ChIP を行うのに最適な「ChIP グレード抗体」を多数ラインアップしています。またアブカムの ChIP キットは、高品質で再現性のある ChIP を簡単に行うことができる製品です。

重要なヒストン修飾や関連タンパク質に対する ChIP グレード抗体

Histone H3

H3K4me1

H3K27me3

H3K9me3

H3K27ac

H3K9ac

H3S10p

H3R2cit

H3K27M

H2AK119ub

γH2A.X

Histone H4

H4K16ac

RNA pol II phopsho S2

RNA pol II phopsho S5

RNA pol II

全ての ChIP グレード抗体を見る


ChIP 関連情報


Writer および Eraser の活性測定をする

ヒストン修飾の付加は「Writer」、除去は「Eraser」と呼ばれる一群の酵素によって行われます。これら酵素の活性はさまざまな方法で測定され、修飾経路が同定されてきました。このような修飾によるエピジェネティクス機構の解析は、基礎研究のみならず創薬研究にも大いに役立っています。Writer や Eraser の酵素活性を測定するキットについては、ヒストン・メチル化および脱メチル化のアッセイ・ガイドをご覧ください。

各種ヒストン修飾に関わる酵素、Writer および Eraser と、関連するヒト・リコンビナント・タンパク質製品をまとめました。

修飾

ヒト・リコンビナント・タンパク質

H3K4 メチル化

SETD7NSD3KMT2A, KMT2C, KMT2D, PRDM9, SETD1A, SETD1B, SMYD3 

H3K4 脱メチル化

KDM1AKDM2BKDM5AKDM5BKDM5C, KDM5D, PHF8C14-orf169/NO66

H3K27 メチル化

EZH1EZH2NSD2NSD3G9A, EHMT1

H3K27 脱メチル化

PHF8KDM6AKDM6BKDM7A

ヒストン脱アセチル化

HDAC1 ~ 11


Writer、Eraser、Reader の阻害

Writer や Eraser の酵素活性を、低分子化合物により阻害し、ヒストン修飾の機能を探る方法も有用であり、広く用いられています。ヒストン H3 メチルトランスフェラーゼとデメチラーゼの阻害剤についてはこちらをご覧ください。その阻害剤のうちのいくつかは、「Reader」とも呼ばれる、ヒストン修飾結合タンパク質の機能を阻害する化合物です。例えば、JQ1 は BET タンパク質ファミリーのブロモドメイン(Bromodomains)とアセチル化リジンとの相互作用を阻害します。

Writer、Eraser、Reader の阻害剤を用いた解析もまた、創薬研究に大いに役立っています。また阻害剤自体が薬の候補物質となっています。

関連製品:

  • JQ1;強力なBET ブロモドメイン選択的阻害剤、細胞透過性
  • GSK-J4;ヒストンデメチラーゼ JMJD3/UTX 阻害剤、細胞透過性
  • MI-192 塩酸塩;HDAC2/3 選択的阻害剤

​​全ての阻害剤についてはこちらをご覧ください。


マス・スペクトロメトリーを用いた新規ヒストン修飾の同定

ヒストンの転写後修飾を同定するに当たって、マス・スペクトロメトリー(Mass spectrometry; MS)もまた、重要なツールとなっています1。近年では、これまで行われてきたボトムアップ方式に改良を加え、ペプチド分子中の新しい修飾を多種類同定することができるようになっています(例:メチル化 +14 Da、アセチル化 +42 Da)2。またOrbitrap のような高分解能の分析機器では、さらに微小な質量のシフトを鑑別することもできます(例:トリメチル化 +42.0470 Da、アセチル化 +42.0106 Da)3

また in vivo における新規修飾の同定においては、MS/MS フラグメンテーションと液体クロマトグラフィーが併用して用いられます。この場合比較対象として、重同位体のラベルや抗体で認識させたサンプルが用いられることがあります。



参考文献

1.          Karch, K. R., DeNizio, J. E., Black, B. E. & Garcia, B. A. Identification and interrogation of combinatorial histone modifications. Front. Genet. 4, 1–15 (2013).

2.        Arnaudo, A. R., Garcia, B.A. Proteomic characterisation of novel post-translational histone modifications. Epigenetics and Chromatin 6:24 (2013).

3.        Karch, K. R., Zee, B. M. & Garcia, B. A. High Resolution Is Not a Strict Requirement for Characterization and Quanti fi cation of Histone Post-Translational Modi fi cations. J. Proteome Res. (2014).

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