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クロマチンは、ヒストンとDNAで構成されています。147塩基対のDNAが8つのコアヒストンに巻きつくことで、クロマチンの構成単位であるヌクレオソームが形成されます。
クロマチンの機能は、細胞核内に収まるようにDNAを効率的に小さくパッケージングし(詰め込み)、DNAの構造・配列を保護することです。DNAがクロマチンによりパッケージングされることで、有糸分裂や減数分裂が可能になり、切断による染色体損傷を防ぎ、さらに遺伝子発現とDNA複製の制御にも重要な役割を果たしています。ここではクロマチン構造の情報と共に、クロマチンのアクセシビリティと相互作用を調べるために使用される解析方法についての情報をご提供いたします。
完全版エピジェネティクスアプリケーションガイドをダウンロードする(英語)
ゲノムは、効率的に核内に収納されています。DNAは、ヒストンに巻きついて、147塩基対のDNAと8つのコアヒストンタンパク質で構成されるヌクレオソームを形成します。ヌクレオソームは、紐上のビーズのように結び付いており、高次クロマチン構造にパッケージングされています(図1)。
図1:クロマチンの構造 DNAはヌクレオソームに巻き付いてクロマチン繊維を形成し、それらが染色体を形成します。
ヌクレオソームに強固に結合したDNA、または高次ヘテロクロマチンに圧縮されたDNAはアクセス不可能なため、転写因子、転写機構、などのDNA結合タンパク質の結合が阻害され、遺伝子サイレンシングを引き起こします。一方、「リンカー」DNAとオープンユークロマチン構造は、結合しやすいため、活発な遺伝子転写を可能にしています。
クロマチンは、遺伝子発現および細胞プログラミングを変化させるために、例えば、異なる発生段階の間、または特定の刺激に応答して、積極的かつ動的にリモデリングされます。このリモデリングにより広いゲノム領域がサイレンシングされたり活性化されたり、ヌクレオソームが解かれることで、特定の遺伝子やDNA配列にアクセス可能になることがあります。
クロマチン構造やヌクレオソームの位置を調べることで、特定の細胞プロセスや疾患状態に関与するエピジェネティックなプログラムとそのメカニズムが明らかになります。
活発な転写を受けやすい状態である領域とヘテロクロマチンに強く結合している領域のゲノムの状態を把握することは、さまざまな背景におけるクロマチンの構造と機能の関係性を理解するための重要な第一歩になります。ゲノム状態のスナップショットを得るために、研究者の方はおそらくDNase-seq、MNase-seq、ATAC-seqの3つの方法のうちの1つを使用されるでしょう。
DNase-seqとATAC-seqは、DNAの露出領域をマッピングするのに対し、MNase-seqはヌクレオソームによって保護された領域をマッピングします。これらの方法は、動的なプロセスのスナップショットを提供していることに留意すべきで、多くの場合、何千もの細胞情報を平均化しています。特定の領域が動的に変化している場合、または集団内の細胞間でゲノムの状態が異なる場合では、得られたデータが方法間で矛盾しているように見えることがあります。このような課題を解決するために、いくつかの単一細胞解析法も開発されています。
DNase-seq
DNase-seqはゲノムの露出領域をDNaseで消化しますが、ヌクレオソームに結合したDNAはDNase消化から保護されています。DNase消化によってできた小さな断片は、配列決定後ゲノムにマッピングされ、転写が活発に行われている領域を明らかにすることができます。
図 2:ATAC-seqプロトコール アブカムのATAC seqにおける段階的指導ガイドブック(英語)はこちらでご覧できます。
クロマチンコンタクトマッピングによりクロマチン3次元構造を評価することで、離れたゲノム領域間の物理的相互作用を明らかにすることができます。このようなマッピングが可能になったのは、クロマチンコンフォメーションキャプチャー(3C)の出現と、それに基づいて開発された手法があったためです。これらのアプローチにはそれぞれ特定の用途に特化した長所がありますが、方法論の多様性から、特定の目的に応じた方法を選択することは難しい場合があります。
F図3:染色体コンフォメーション技術 3C、4C、5C、ChIA-PET、Hi-Cの各ステップ。
染色体コンフォメーション・キャプチャ (Chromosome Conformation Capture: 3C)
3Cは、ホルムアルデヒド架橋によりクロマチンの3次元構造を固定し、続いて制限酵素消化を行います。切除されたDNA断片をqPCRとシークエンスで分析し、離れたDNA領域がどこでつながっているかを特定します。生体内の3次元クロマチン構造と相互作用を解析するためのこのアプローチは、2002年に開発され(Dekker et al.、2002)、より大きな規模、早い処理速度、優れた特異性を達成するために開発された多くの関連技術の基盤となっています。
円形化染色体コンフォメーション・キャプチャ(Circularized Chromosome Conformation Capture: 4C)
4Cは、関心のある遺伝子座と相互作用する未知のDNA領域の同定を可能にします。特定の領域内での新規相互作用の発見に理想的です (Dekker et al., 2006)。
4Cに関する役立つヒント:
炭素コピー染色体立体配座キャプチャー(Carbon copy chromosome conformation capture: 5C)
5Cは、ターゲット遺伝子座に関連するDNA領域から任意のライゲーション産物ライブラリーを作製し、NGSで解析します。また、5Cは、特定の染色体の詳細な相互作用マトリックスを図式化する場合など、特定の領域内の相互作用に関する詳細な情報が必要な場合に理想的です。5Cは、各5Cプライマーを個別に設計する必要があるため、実際のところ5Cは真の意味でゲノム全体に対応しているわけではなく、特定の領域に対し最適な方法です(Dotsie and Dekker、2007)。
5Cに関する役立つヒント :
ペアードエンドタグシーケンシング(paired-end tag sequencing)によるクロマチン相互作用分析(ChIA-PET)
ChIA-PETは、ChIPと3Cの側面を取り入れ、特定のタンパク質を介した離れたDNA領域間の相互作用を解析します。
ChIA-PETは、注目タンパク質の未知のDNA結合部位とそれらと相互作用するゲノム領域の探索に最適です。例えば、転写因子結合部位の研究にChIA-PETは最適です。というのも、ゲノム領域間の相互作用を検出するために、DNAに転写因子が結合している必要があるためです(Fullwood et al.、2009)。
ChIA-PETに関する役立つヒント:
ChIPループ
ChIPループは、ChIPと3Cを組み合わせた技術で、関心のあるDNA領域に結合すると思われるタンパク質を標的とする抗体を用います。ChIPループは、既知の2つのDNA領域が関心のあるタンパク質を介して相互作用しているかどうかを調べるのに適しています。ChIPループは、予測可能な相互作用の確認には適していますが、新規の相互作用の発見には適していません(Horike et al.、2005)。
ChIPループに関する役立つヒント:
Hi-C
Hi-Cは、ゲノム全体からライゲーション産物を増幅させ、ハイスループットシーケンシングによりその頻度を評価します。Hi-Cは、例えば、腫瘍細胞における染色体構造のゲノムワイドな変化をマッピングするなど、ゲノム全体を広範囲にカバーすることが必要で、分解能はそれほど気にならない場合に最適な選択です(Lieberman-Aiden et al.、2009)。
Hi-C helpful hints:
Capture-C
Capture-Cは、3C、オリゴヌクレオチドキャプチャー技術(oligonucleotide capture technology: OCT)とハイスループットシーケンシングの組み合わせにより、同時に数百の遺伝子座を分析します。Capture-Cは、高分解能とゲノム全体規模のデータ解析の両方が必要な場合に理想的です。例えば、ゲノム内のすべての疾患関連SNPが局所的なクロマチン構造に及ぼす機能的影響を解析することなどに使用できます(Hughes et al.、2014)。
Capture-Cに関する役立つヒント:
Belton JM, McCord RP, Gibcus JH, Naumova N, Zhan Y and Dekker J (2012). Hi-C: a comprehensive technique to capture the conformation of genomes. Methods, 58, 268-76.
Dekker J, Rippe K, Dekker M and Kleckner N (2002). Capturing chromosome conformation. Science, 295, 1306-1311.
Dekker J. (2006). The three ‘C’ s of chromosome conformation capture: controls, controls, controls. Nat Methods, 3, 17-21.
Dostie J and Dekker J (2007). Mapping networks of physical interactions between genomic elements using 5C technology. Nat Protoc, 2, 988-1002.
Dostie J, Zhan Y and Dekker J (2007). Chromosome conformation capture carbon copy technology. Curr Protoc Mol Biol, Chapter 21, Unit 21.14.
Horike S, Cai S, Miyano M, Cheng JF and Kohwi-Shigematsu T (2005). Loss of silent-chromatin looping and impaired imprinting of DLX5 in Rett syndrome. Nat Genet, 37, 31-40.
Fullwood MJ, et al. (2009). An oestrogen-receptor-alpha-bound human chromatin interactome. Nature, 462, 58-64.
Lieberman-Aiden E, et al. (2009). Comprehensive mapping of long-range interactions reveals folding principles of the human genome. Science, 326, 289-293.
Hughes JR (August 2014). Email interview.
Hughes JR, et al. (2014). Analysis of hundreds of cis-regulatory landscapes at high resolution in a single, high-throughput experiment. Nat Genet, 46, 205-212.
Simonis M, Kooren J and de Laat W (2007). An evaluation of 3C-based methods to capture DNA interactions. Nat Methods, 11, 895-901.
van de Werken H, de Vree PJ, Splinter E, Holwerda SJ, Klous P, de Wit E and de Laat W (2012). 4C technology: protocols and data analysis. Methods Enzymol, 513, 89-112