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近年、アポトーシス(apoptosis)以外にも、ネクロトーシス(necroptosis)、パイロトーシス(pyroptosis)、フェロトーシス(ferroptosis)など、さまざまな異なる形態の細胞死が報告され、非アポトーシス性細胞死(non-apoptotic cell death)と呼ばれています。これらは類似した形態学的特徴を有し、区別することは簡単ではありません。しかしながら、それぞれに関与する調節経路が異なることから、その調節経路に関与する物資をマーカーにすることによって、区別することができます。
ただしそれぞれの細胞死を区別・特定する実験系を組む場合には、それら特定のマーカーを用いた方法だけで行うことはお勧めしません。各種細胞生存率アッセイ(cell viability assay)や、アポトーシスである可能性を排除するためにアポトーシス・アッセイと組み合わせて行うべきです。
細胞生存率アッセイにつきましては、こちらをご参照ください。
ネクロトーシスの過程は、デスレセプターである TNFR12(Tumor necrosis factor receptor 1)にリガンドが結合することによって開始されますが、このレセプターとリガンド以外にも、ネクローシス経路には多くのタンパク質が関与しています。例えばその過程においては MLKL(Mixed lineage kinase domain like protein)が RIP3 によりリン酸化される過程が重要です。それに基づき、ネクロトーシスを同定する方法として、MLKL のリン酸化状態の検出と、ネクロトーシス阻害剤(インヒビター)の使用があります。
ネクロトーシス経路のキーとなるタンパク質
タンパク質 | ネクロトーシスにおける役割・特性 | 製品リスト |
RIP1 | ネクロソーム(necrosome)に RIP3 | |
RIP3 | RIPK1 によってリン酸化され、 | |
MLKL | プロテインキナーゼ様ドメイン(Kinase | |
Caspase-8 | ネクロトーシスを阻害する5。 |
MLKL のリン酸化
MLKL は RIP3 に Thr357 および Ser358 がリン酸化されることによって活性化されます。したがって MLKLの活性化状態は、MLKL のこれら残基のリン酸化状態を検出することによって知ることができます。この検出は、ウエスタン・ブロッティング、免疫組織染色、フローサイトメトリーなどで行われます。
Product highlight | |
Anti-MLKL (phospho S358) antibody (ab187091) | |
抗体タイプ: ウサギ・モノクローナル 適用アプリケーション: WB、IHC-P 適用動物種: ヒト 図: ヒト皮膚組織のパラフィン包埋切片をサンプルとした。抗体の使用濃度は X250。 |
ネクロトーシスの阻害
細胞死がネクロトーシスによるものかどうかを知るためには、ネクロトーシスをインヒビターあるいはトランスジェニック・モデルを使用して阻害するという方法があります。一般的に後者の方法の方が特異性の点で望ましいとされています。
インヒビター | ターゲット | 製品 |
Necrostatin-1 (Nec1) | RIP1 | |
7-Cl-O-Nec-1 (Nec1s) | RIP1 | |
GSK'872 | RIP3 | |
Necrosulfonamide | MLKL |
パイロトーシスは病原体の感染に応答して起こる、プログラムされたネクローシスとも言える細胞死で、Caspase-1 やCaspase-4 などの各種カスパーゼ(Caspases)が関与します。パイロトーシスを起こした細胞(pyroptotic cells)は形態学的には、細胞の膨張および急速な細胞膜溶解が認められ、炎症を伴います。パイロトーシスの検出は、カスパーゼの活性化、Gasdermin D の切断、検証経路に関与する成分の阻害または除去、などによって行います。
パイロトーシス経路のキーとなるタンパク質
タンパク質 | 機能 | パイロトーシスにおける役割・特性 | 製品 |
Caspase 1 | 炎症性カスパーゼであり、センサー・タンパク質や炎症性物質によって活性化される。 | Gasdermin D | |
Caspase 11 (mouse) or Caspase 4 and 5 (human) | 炎症性カスパーゼであり、細菌性多糖類(bacterial polysaccharides)によって活性化される。 | Gasdermin D | Caspase 11 |
Gasdermin D | カスパーゼによって切断される8–10。 | パイロトーシス |
カスパーゼ活性
カスパーゼは、前駆体であるプロカスパーゼ(Pro-caspase)がパイロトーシスの過程において切断されることによって活性型になります。そのカスパーゼの切断・活性化は、活性型カスパーゼ特異的抗体を使用することによって、検出することができます。
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Anti-caspase 11 rabbit monoclonal antibody (ab180673) | |
抗体タイプ: ウサギ・モノクローナル 適用アプリケーション: WB、IP 図: 左レーン:RAW 264.7 細胞ライゼート(コントロール)、右レーン:LPS で処理した RAW 264.7 細胞ライゼート。抗体の使用濃度は X1000。 |
カスパーゼの活性化は、アッセイ・キットを用いて直接検出することもできます。ただしカスパーゼはアポトーシスにも深く関与しているため、カスパーゼの切断・活性化の検出のみでは、パイロトーシスが起こっているとの証拠にはならないのでご注意ください。各種カスパーゼのアッセイ・キットについてはこちらをご参照ください。
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Caspase 1 assay kit (fluorometric) (ab39412) | |
適応サンプル: 細胞・組織ライゼート アッセイ時間: 2 時間 図: バックグラウンドを差し引いた Caspase-1 の活性。 |
Gasdermin D
パイロトーシスの過程において 53 kDa のタンパク質 Gasdermin D は切断され、30 kDa の N 末端断片が生じます。これはウエスタン・ブロッティングで検出することができます。この検出には Gasdermin D の N 末端を認識する抗体が必要です。アブカムは Gasdermin D ウサギ・モノクローナル抗体 ab155233 の使用をお勧めします。
パイロトーシスの阻害
パイロトーシスをネクロトーシスやアポトーシスと区別するためには、その細胞死が Caspase-1、-11、-4、-5 依存的であることを示さなければなりません。そのためには、インヒビターあるいはトランスジェニック・モデルを使用して阻害するという方法があります。
カスパーゼのインヒビターとしては、タンパク質分解酵素の特異的基質となり得る合成ペプチドがよく用いられます。例えば Caspase-1 の阻害剤としては z-YVAD-fmk(ab141388)が広く用いられています。各種カスパーゼのインヒビターにつきましては、こちらをご覧ください。
フェロトーシスは、脂質活性酸素種(Reactive oxygen species; ROS)の産生の結果として生じる細胞死で、鉄が関与しています11。フェロトーシスが起こっている細胞は形態学的に、密度が増加した正常よりも小さいミトコンドリアを含むという特徴を示します。フェロトーシスの存在は、細胞死がインヒビターによって阻害されるかどうかを観察し、過酸化脂質を測定することによって確認することができます。
フェロトーシス経路のキーとなる物質
タンパク質 | 機能 | フェロトーシスにおける役割・特性 | 製品 |
GPX4 | 細胞膜脂質中で、脂質のヒドロペルオキシドを減少させる。 | フェロトーシスにおいて活性が低下する。 | |
Glutathione | GPX4 の基質 | 経路によっては、フェロトーシスの過程で除去される。 |
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Glutathione peroxidase assay kit (colorimetric) (ab102530) | |
適応サンプル: 培養上清、尿、血清、血漿、血小板、組織抽出物 感度: 0.5 mU/mL 図: 各種細胞 106 cells あたりの活性。インキュベーション時間 10 分。 |
フェロトーシスの阻害
フェロトーシスの存在は、フェロトーシスを阻害することが知られているインヒビターを用いて確認することができます。フェロトーシスは GPX4 活性の低下によって引き起こされるため、ネクロトーシスやパイロトーシスとは異なり、ノックダウン・モデルは有効な方法ではありません。
フェロトーシスのインヒビターには次のような物質があります。
インヒビター | 作用 | 製品 |
Ferrostatin-1 | 脂質過酸化物の除去。 | |
Liproxstatin-1 | 不明(おそらくフリーラジカルの低下)。 |
脂質過酸化物の蓄積
フェロトーシスは、脂質 ROS の蓄積によって起こります。脂質 ROS を検出するためには、以下の通り、いくつかの方法があります。
アッセイ系 | 原理 | 方法 | 製品 |
C11-BODIPY | フリーラジカルによって生ずる酸化を検出する。 | フローサイトメトリーを用いる。 | |
Malondialdehyde の定量 | 脂質酸化の副産物である Malondialdehyde を定量する。 | アッセイ・ キットを用いる。 | |
4-HNE の定量 | 脂質酸化の副産物である 4-HNE を定量する。 | 抗体を用いる。 |