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NF-κB(Nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells)転写因子ファミリーには p65(RelA)、RelB、c-Rel、p50(NF-κB1)、p52(NF-κB2)の 5 種類があります。これらがホモダイマーあるいはヘテロダイマーを形成することによって転写因子として機能しますが、そのシグナル伝達経路において最も一般的なのは、p50 と p65 から形成されるヘテロダイマーであり、多くの種類の細胞に存在しています。それ以外のタンパク質はある程度限られた細胞種に存在しており、例えば c-Rel は主に造血系の細胞で認められます(Napetschning and Wu, 2013; Bassères and Baldwin, 2006)。
RelA、RelB、c-Rel の C 末端側には転写活性化ドメイン(Transcriptional activation domain; TAD)が存在し、その働きによりターゲット遺伝子の転写を誘導します。一方、p50 と p52 には TAD が存在せず、p50 と p52 それぞれからなるホモダイマーや、p50 と p52 からなるヘテロダイマーは、ターゲット遺伝子の転写を抑制します。なお、p50 は前駆体である p105 から、p52 は前駆体である p100 から、それぞれユビキチン-プロテアソーム系を介して限定分解されて生じます。(Napetschnig and Wu, 2013; Bassères and Baldwin, 2006)。
NF-κB シグナル経路の中で p65 を介した経路は、炎症反応に深く関与しています。この経路はフリーラジカル、紫外線、TNFα(Tumor necrosis factor α)、インターロイキン 1-beta(Interleukin 1-beta; IL-1β)、PAMPs(Pathogen-associated molecular patterns)、LPS(Bacterial lipopolysaccharide)などのストレス刺激によって誘導されます。なお NF-κB は記憶やシナプス可塑性とも関わっており、またその異常な発現は癌とも関連があるとされています(Courtois et al., 2006; Gutierrez and Davies, 2011)。
通常の状態では NF-κB ダイマーは細胞質に存在する IκB(Inhibitor of κB)と結合し、不活化されています。7 種類ある IκB ファミリーに属するタンパク質のうち IκBα と IκBβ は、p50/p65 ヘテロダイマーと選択的に結合し、核局在シグナル(Nuclear localization signal, NLS)をマスクすることで、p50/p65 の核移行を阻害します。
ストレス刺激が加わると、細胞膜上のレセプターを介して IKK(IκB kinase)複合体が活性化されます。活性化した IKK 複合体が IκBα をリン酸化すると、それを引き金に IκBα がユビキチン化され、プロテアソームによって分解されます。IκBα が分解されることによって NF-κB ヘテロダイマーが核内に移行できるようになり、特定の遺伝子のプロモーターに結合して、炎症誘発性あるいは抗炎症性のタンパク質の発現を調節します。なお NF-κB ヘテロダイマー量が増加すると IκBα および IκBβ の発現が活性化され、ネガティブフィードバックによってこのシグナル経路は停止します。
NF-κB サブユニットはリン酸化、O-GlcNAc 化、ユビキチン化、ニトロシル化、アセチル化、プロリン異性化、メチル化など、多くの修飾が報告されています。こういった修飾が最も研究されているサブユニットは p65 です(Reviewed by Napetschnig and Wu, 2013; Gilmore, 2006)。
NF-κB は感染との戦いに非常に重要ですが、病原体の中には NF-κB の活性をうまく利用しているものもあります。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus; HIV)は、ゲノム中に NF-κB サブユニットと結合できる領域を持ち、この領域を介してウイルス遺伝子の発現と複製を促進します(Hiscott et al., 2001)。