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PD-1(programmed cell death – 1)受容体(別名:CD279)は活性化 T 細胞の表面に発現します。一方 PD-1 のリガンドである PD-L1(別名:B7-H1、CD274)および PD-L2(別名:B7-DC、CD273)は、通常抗原提示細胞の表面上に発現します。PD-1、PD-L1 および PD-L2 は、T 細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く、免疫チェックポイント・タンパク質です。腫瘍細胞に対する免疫システムは PD-1 と PD-L1 の反応によって必要な場合のみ発動し、自己免疫疾患となることを防ぎます。
PD-L1 がどのように免疫療法バイオマーカーとして利用されているか
ヒトを含む動物には「cancer immunity cycle(がん免疫サイクル)」と呼ばれるがんに対する自然防御システムがあります(Chen and Mallman, 2013)。このシステムは次のように正常に働いている限り、発生したがん細胞は死に至ることになります。
1. 腫瘍細胞に発現している変異抗原を樹状細胞が認識します
2. 樹状細胞は認識した抗原を T 細胞に提示し、その結果細胞傷害性 T 細胞の活性化が誘導されます
3. 活性化した細胞傷害性 T 細胞が腫瘍細胞へと遊走し、腫瘍微小環境へ浸潤します
4. 活性化した T 細胞が腫瘍細胞を認識し結合します
5. 結合したエフェクター T 細胞がサイトトキシン(細胞毒)を放出し、腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こします
アポトーシス誘導された腫瘍細胞は腫瘍関連抗原(TAA)をさらに放出し、がん免疫サイクルをさらに推し進めます。
T 細胞の活性化は、亢進と抑制のシグナル双方により制御されます。これらが適切に制御されていれば T 細胞の腫瘍細胞への選択的な認識と応答は正しく行われますが、亢進の刺激が過剰になると正常組織への攻撃による、慢性の自己免疫疾患が引き起こされる場合があります(Villaruz et al, 2014)。T 細胞受容体が樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)表面にある抗原を認識すると T 細胞が応答し、APC と T 細胞がお互いに刺激し合い、その結果として T 細胞が完全に活性化されます。
PD-L1 が PD-1 に結合すると T 細胞からのサイトカインの産生が低下し、T細胞の活動を抑制するシグナルが伝達されます。腫瘍細胞は T 細胞からの認識を逃れるために、この免疫チェックポイント・シグナル伝達を利用します。
PD-L1 が PD-1 に結合すると T 細胞からのサイトカインの産生が低下し、T 細胞の活動を抑制するシグナルが伝達されます。腫瘍細胞は T 細胞からの認識を逃れるために、この免疫チェックポイント・シグナル伝達を利用します。
PD-L1 は腫瘍細胞や腫瘍微小環境に存在する非形質転換細胞の細胞表面上にも強く発現しています(Pardoll, 2012)。この PD-L1 が活性化している細胞傷害性 T 細胞表面の PD-1 に結合すると、T 細胞の活動が抑制されます。そして不活性化した T 細胞は遊走することなく腫瘍微小環境に留まります。PD-1/PD-L1 を介したこのようなメカニズムは、腫瘍免疫に対する腫瘍細胞の抵抗性を表すものです。
このような腫瘍免疫に対する抵抗性を弱め、生体が本来有している腫瘍への免疫応答を保持することを目指して、がん免疫療法は研究されています。1990 年以降、がん治療を目的とした、免疫チェックポイントをブロックする阻害剤が何種類も開発され、10 種類以上のモノクローナル抗体医薬品について FDA の承認が得られています。
近年 PD-1/PD-L1 免疫チェックポイントをターゲットとして、Bristol-Myers Squibb 社により抗 PD-1 モノクローナル抗体医薬品ニボルマブ(Nivolumab)が開発されました。根治切除不能な悪性黒色腫および扁平上皮非小細胞肺癌を適応として有望な結果が得られ、各国で治験・承認されています*。また他にも Merck 社により抗 PD-1 モノクローナル抗体医薬品ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)が開発され、根治切除不能な悪性黒色腫への適応が承認されています**。また、非小細胞肺癌 NSCLC、腎細胞癌、膀胱癌など、さまざまな癌に対する治療を目的として、PD-L1 をターゲットとした医薬品の開発も進んでいます。例えばAstrazeneca 社により開発されている抗 PD-L1 モノクローナル抗体医薬品 MEDI4736、Roche 社により開発されている抗 PD-L1 モノクローナル抗体医薬品候補 Atezolizumab(MPDL3280A)などで、これらは早期臨床試験で有望な結果が得られているようです。
*2016 年 9 月現在、ニボルマブは日本では根治切除不能な悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌に対して承認取得済みです。
**2016 年 9 月現在、ペンブロリズマブは日本では根治切除不能な悪性黒色腫に対してのみ承認取得済みです。
がん免疫療法は、これまでの化学療法や放射線療法にとって変わる、有力な治療法となるかもしれません。