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注目キーワード: IP3 受容体 ・シトクロム C ・BCL-2 ・ BCL-xL ・ BAX ・ BAK ・ BAD ・ tBID
アポトーシス Apoptosis は組織の恒常性を保ち、また正常な発生を促すために必須の、高度に調節・管理された細胞死のプロセスです。不必要なあるいは有害な組織細胞を取り除くことで、細胞の増殖と分化のバランスを保っています。アポトーシスを引き起こす経路には、細胞表面上のデス・レセプター Death receptor へのリガンドの結合を介する外因的なものと、ミトコンドリアを介する内因的なものがあります。
アポトーシス・パスウェイ(PDF 版)はこちら
どちらの経路においても、システイン・プロテアーゼの一種であるカスパーゼ Caspase がその経路を活性化します。カスパーゼは、細胞骨格や核の線維状タンパク質であるラミン Lamin を断片化し、DNA の分解を引き起こします。そしてカルシウム・イオン Ca2+ 濃度の微妙な変化により、アポトーシスが引き起こされたり、あるいは抑制されたりすることが知られています。ここでは、ミトコンドリアを介する内因的なアポトーシス経路における Ca2+ の重要性について解説します。
小胞体(ER)は細胞内における Ca2+ の貯蔵器官であり、内部の Ca2+ 濃度は 0.1 – 1 mM に保たれています。一方、細胞質やミトコンドリア・マトリックス内の Ca2+ 濃度は 100 nM 程度です(Hajnóczky et al., 2003)。ER から Ca2+ が放出され、それをミトコンドリアが取り込むことにより、アポトーシスが引き起こされます。
ER 膜上のイノシトール三リン酸(Inositol trisphosphate; IP3)受容体は Ca2+ イオン放出チャネルであり、放出された Ca2+ は ER と接触したミトコンドリアへと受け渡されます。ER でのタンパク質の折りたたみ能力が低減して異常タンパク質が蓄積するなど、ER が過度にストレスを受けると、Ca2+ イオンの放出が引き起こされます(Orrenius et al., 2003)。
また、Boehning ら(2003)によると、アポトーシス誘導刺激によりミトコンドリアから放出された少量のシトクロム C(Cytochrome c)が、ER 表面上の IP3 受容体に結合することによっても、Ca2+ が放出されます。
ミトコンドリア内の Ca2+ の蓄積は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)が開く方向に刺激します(Orrenius et al., 2003)。mPTP が開くとミトコンドリア膜の透過性が亢進し、Cytochrome c に代表される各種アポトーシス誘導因子が放出されます。
遺伝子配列の相同性から BCL-2 ファミリーに分類されるタンパク質群は、アポトーシスの制御に関与しています。このうち BCL-2 や BCL-xL などのBCL-2 like サブファミリーはアポトーシスを抑制する働きがあり、BAX や BAK などの Bax-like サブファミリーおよび BAD などの BH3-only サブファミリーはアポトーシスを促進する働きがあります。
BCL-2 ファミリー・タンパク質はミトコンドリア上に存在し、ミトコンドリア膜の透過性変化や、Cytochrome c などのアポトーシス誘導因子のミトコンドリアからの放出を制御することによって、アポトーシスをコントロールしています(Chipuk et al., 2010)。また ER 上にも存在しており、ER 膜とミトコンドリア 膜間における Ca2+ 流動の制御も行っています。
アポトーシス抑制性の BCL-2 like サブファミリーは、ER が保持できる Ca2+ 量を減らす働き(Pinton et al., 2000; Foyouzi et al., 2000)と、IP3 受容体に直接働いてチャネルが開く確立を減らす働き(Rong et al., 2008)を持っています。その結果、ER からの Ca2+ の放出が減少し、下流で起こるミトコンドリアの Ca2+ 取り込み量が減少します。
アポトーシスを促進する Bax-like と BH3-only サブファミリーのタンパク質も、Ca2+ 依存性のアポトーシスに関わっています。BAX および BAK は ER およびミトコンドリア内の Ca2+ 恒常性を調節し、ミトコンドリアの Ca2+ 取り込みを促進します(Scorrano et al., 2003; Nutt et al., 2002)。また、BAD と tBID はミトコンドリアの Ca2+ に対する感度を上げ、ER から Ca2+ が放出された際にミトコンドリアが Ca2+ を取り込みやすくする働きを有します(Roy et al., 2009; Csordás et al., 2002)。